福岡県小郡市に建つ味坂保育園のRC造2階建て園舎。この保育園は隣接する光桂寺が運営していて、敷地は光桂寺の境内でもある。
【豪雨災害に備える】園児の命を守り、地域に開かれた「避難所」としての園舎
敷地内には乳児・年少児の保育室やホール、給食室などの管理部門のある鉄骨平屋建ての園舎と、4・5歳の年長児の保育室がある木造平屋建ての園舎が建っていたが、園児数の変化に伴う手狭さや、木造園舎の老朽化が進んだこと、また近年の地震、豪雨災害などにも対応できるよう、新しい園舎に建て替えることとなった。
新園舎の1階は、年長児の利用する2室の保育室と、シャワー室やバリアフリートイレなどを追加した広めのトイレ、別棟に入っていた職員室、2階には面談室、会議室、倉庫などの機能を追加した。
またこの地域で近年多発する豪雨災害の際、園児の一時避難場所としても利用できるように、鉄筋コンクリート造・2階建てという構造・規模とすることで、園児の安全性を確保するとともに、避難所という社会的役割を両立させることにした。
【敷地の歴史を活かす】光桂寺の参道と既存樹木を取り込む配置計画
保育園の門を入ると、正面には光桂寺の本堂が見える。園庭は光桂寺の参道でもあるのだ。また園庭にはムクロジ、柿木など、園児の成長を見守ってきた既存樹もある。そういった要素を取り込みながら、園児・保護者・職員の動線を整理し、建物の配置計画を進めていった。
【騒音を日常の豊かさに変える】壁面収納と子供たちの『秘密の隠れ家』
建物の主な室は北側の園庭に対して開かれていて、2室の保育室も北面は園庭に面している。南面は光桂寺の駐車場と県道に面しているが、県道はトラックなどの大型車両が頻繁に通行するため、かなりの騒音がある。それを遮るために、南側の壁面を高く立ち上げて防音壁とするとともに、室内側は園児の個人ロッカーや備品を入れたりする壁面収納家具として構成している。
壁面収納家具の一部は子供が1人か2人入ったり、登ったりできるような小さなスペースになっている。このスペースは、ある時は舞台であり、ある時はお店であり、ある時は1人で過ごす秘密の隠れ家でもある。壁と天井の取り合い部分はハイサイドの連窓になっていて、保育室内は日の移ろいが感じられる光で満たされている。2室の保育室の間には円筒形の半外部空間がある。ここも子供たちの秘密の場所である。
子供たちはこの園で1日のほとんどを過ごすことになる。ここで出会った人々、見たもの、触ったもの、におい、音、光、風、すべての現象が彼らを形作ることになる。ささやかではあるが、この建物が彼らの成長の刺激になることを祈っている。
構造・規模:鉄筋コンクリート造2階建て
延床面積:287.76㎡
サイン計画:ディクトムデザイン
構造設計:エス・キューブ・アソシエイツ
施工:匠建設