福岡県小郡市に建つ浄土真宗大谷派寺院・光桂寺の庫裏建て替え計画。
既存の庫裏の建物本体・設備の老朽化、床面積不足を解消すること、また昨今の「寺離れ」という問題にどのように対応し、今後どのような寺院を目指すのか。それらの難題を解決すべく、本計画は2015年から始まった。
従来の庫裏とは寺族の住居などを指すが、この新たな庫裏は今までの寺族の住居という用途に加え、葬儀などの法要や門徒の会議・勉強会はもちろん、映画鑑賞やコンサートなどを行うことができる設備を備えた広間、法要以外にも子ども食堂、料理教室、バザーやお祭りの際に多数で調理できる大きな厨房、通夜やそれ以外でも宿泊可能な座敷、また門徒内外問わず近隣地域の人々、隣接する味坂保育園の園児・保護者などが気軽に立ち寄ることができるような喫茶・読書スペースなどを備えた玄関・接待所が計画されている。
門徒の高齢化により、本堂の外部階段を上るのが難しくなり、お参りを敬遠するようになっているという問題を解消すべく、庫裏の玄関からスロープを経て、本堂にアクセスできるよう計画されている。葬儀・法要・勉強会などを行うホールはすべて板張り仕上げとして、簡素ながら清潔な空間となっている。ホールと厨房は引き戸で仕切られており、お斎などの際は直接給仕を行えるようになっている。ホール奥には会議や宿泊ができる3室の和室を備えている。それらのパブリックな居室とプライベートな寺族の住居は適度な距離を保ち配置されている。
旧庫裏は本堂にかぶさるように建っていたので敷地に面する県道から本堂が良く見えず、「ここにお寺がある」ということが分かりにくかったので、新しい庫裏は本堂の姿がはっきり見えるようセットバックさせた。また近年この辺りは豪雨被害が多発し、そのような災害に対応するため床面を高くあげる必要があったので、建物をセットバックさせた結果、駐車場から玄関まで緩やかなスロープでアプローチできることとなった。玄関・接待所の屋根は白色の円錐形で、目印にもなっている。この屋根の内部も円錐形に吹き抜けていて、頂部にはトップライトを設け、陽の移ろいを楽しむことができる。
古くからある建物にありがちな話だが、敷地内には完了検査を受けていない建物が複数建っていたり、所有者や地目の異なる複数の土地で敷地が構成されているなど、法的に整理する必要があった。また本敷地は市街化調整地域内に位置するため、既存の建築面積を大きく上回る建築物の新築行為、敷地の統合や地目の変更などに伴い、開発許可申請などを行う必要があり、様々な協議・手続き・時間も必要となった。
この建築計画は門徒・寺族・設計事務所が集まり、建物はもとより、利用・運営方法や新しい庫裏で開催可能な各種イベント、資金調達方法など、様々な問題・難題を、総代会、建設委員会、ワークショップなどを開催し議論を重ね、約9年の歳月をかけて実現した。
構造・規模:木造在来軸組み工法 1階建て
延床面積:516.90㎡
構造設計:エス・キューブ・アソシエイツ
施工:永利建設