敷地は、8つに分譲された土地の中央に位置し、行き止まりの道路に接しています。分譲地の行き止まりの道路は、各住戸の共有の広場として使われ、 情報交換や子供たちの遊び場となります。しかし、このような広場的道路に対して分譲地の家の佇まいは閉ざした印象となることが多いように思います。
私は敷地を超えて他の家族が集まる広場的道路まで明るい雰囲気を引き延ばすことを考えました。しかし、この家を広場的道路を含めてつながりを強めるには、「道路からの距離」も、「室内での距離」も、物理的な距離が近いと感じました。
そこで、霧の中で感じる『距離』のように、距離感を引き延ばすことを考えました。それは、元のイメージに別のイメージを重ね足していくことで、元のイメージを柔らかく消し、距離感をつくることです。
具体的には、「元のイメージ」を「ソファのあるリビング」だとすると、そこに「壁の配置」や「壁の高さ」、「壁の種類」、「床の高低差」を利用して、「元のイメージ」に「それらのイメージ」を重ね足していきます。そして更に奥にある個室は、有孔板を数枚重ね足し、全体的に消して行くことで、より距離感をつくるようにしました。重なった有孔板は水の分子が濃度をつくりだすように、室内に霧をつくり出します。
幾重にも重なる有孔板を透る光は、見る角度によって複雑に変化し、動きとともにキラキラと輝き、壁や床や天井に綿密でやわらかい光の粒を落とします。このように視界を遮りながら明るさを伝えていくことで、分譲地での新たな距離感が生まれ、8つの分譲地を含んだ敷地の少しソトまで、明るい存在感を持って佇むことができました。