体感としての自然
アートコレクターの建主は、自然と向き合う場所を、陽の当たる景色が望める北向きの傾斜地に求めた。この別荘は、各部屋ごとに、それぞれの景色をつくり、移動と共に景色が移り変わるようにした。1、2階をつなぐ唯一の階段がある部屋を外部にし、暮らしの中で、この外部を必ず通る計画にした。
建物の構成は、部屋を数珠状に繋げ、立体的に折り曲げた2階建てとした。 各部屋は アートを飾る展示壁で区切り、部屋をつなぐ通路は 北の景色から離れた南側に設け、通路と部屋の間には 壁を設けなかった。
そのようにして、部屋を区切る展示壁を通過するたびに、次の部屋越しに、意識が景色に向くようにした。
各部屋の窓は、同じ方向を向いているが、窓の縦横比やカタチを変え、すべての部屋がメインの部屋となるように異なる体感をつくった。
また、各部屋の奥行きは、傾斜地の谷側にいると浮遊感、山側にいると安心感、という2つの体感を意識できる最小の奥行きにした。
人は、景色や環境に慣れてしまうが、動線の中心に外部を挟むことで、予想外の情報に出会い、感覚が呼び起こされる。
雨の前には、しっとりした湿気を肌で感じ、小鳥たちのザワツキは耳で感じる。内外の明暗差は目で感じ、空気の濃度は鼻で感じる。その時々で、感じることは変わる。
ここには、室内で感じられる良さも、外部だから感じられる良さもある。
その体感を暮らしの中で繰り返えしていくことで、眺めているだけでは得られない自然を感じることができる。
変化し続けている自然を顕在化させ、 「体感的対比がつくる自然」と向き合う場所を目指した。
その人その人が、その時々で、つないでいく自身の自然と向き合えるように。