この敷地から少し離れたところには、広大な田畑が広がっています。 そこでオーナーと家族は、味、品種、栽培方法にこだわって野菜を育てています。 その素材を活かした調理方法で野菜が持つ本来の美味しさを提供するために生まれたのが、この「Hanafarm Kitchen」というレストランです。
私は、彼らがつくる畑に足を運び、彼らの手と土が入り交じり、手をかけてつくられる野菜について学びました。 その野菜は、更に手が加えられ、気持ちのこもった手でお客さんの待つテーブルまで運ばれていきます。 私は、その彼らの気持ちのこもった温もりのある「手」に着目しました。
まず、お客さんをやさしく包む「手」のような囲いをつくりました。そのうちのいくつかは、指を閉じたイメージとし、いくつかは指の間に隙間をつくったイメージとしました。 赤みを帯びた光は、手の平を太陽にかざしたときのように隙間を透けて、あたたかみをつくります。こうして、彼らがつくる「あたたかさ」を表現することを考えました。
具体的には、客席スペースに5つの箱を用意し、間と方向性を持たせた配置にしました。 そして箱の中央を持ち上げることで、箱の外側からは広がりを、内側からは囲われる安心感を感じるようにつくりました。 入口とカウンター席以外の箱は、輪郭を弱めるためにルーバーとし、隣り合うルーバーとずれるように間隔を変えました。 それにより、プライバシーを弱めながら、そこで過ごす人の思い思いの動作が重なり、空間の「つながり」や 「奥行き」に変化が表れます。
この一体的なつながりを持った空間で沸き上がった賑わいは、別の賑わいへとやわらかく伝わっていきます。 ルーバーでつくった「弱い リンカク」は賑わいを伝える一方、次第に自分たちの賑わいへと意識が向いていきます。 こうして、日差しが差し込む森の木陰で、昼食をとるような居心地の良い場が生まれました。