アートと暮らす家|設計事務所による注文住宅実例10選 著者:クラスキ編集部
アートと暮らす家では、住まいそのものが作品を受け止める背景となり、絵画や彫刻、写真などと空間との関係が暮らしの印象をつくります。壁面の余白や光の入り方、視線の抜け、素材の質感など、作品を引き立てる要素は一つに限られません。作品を置く場所によって、同じ住空間でも感じられる表情は変わり、建築とアートが互いの存在感を高めるような構成も考えられます。家具や照明とのバランスまで含めて見ると、作品を飾るための空間というだけではなく、アートと日常が自然に重なり合う住まいの姿が浮かびます。アートと暮らすというテーマが実際の住宅でどのように建築として表現されているのか、設計事務所による注文住宅の実例を紹介します。
桃山の家 澤村昌彦建築設計事務所
静かに佇む書道家の家
ある画家のアトリエ-静けさと緊張感を纏う創造の場- 乗松得博設計事務所
一人の画家が静かに創作へ向き合うために計画されたアトリエです。住まいのような安らぎとは異なる、ほどよい緊張感と静寂をまとった空間を目指しました。過度な演出を排し、雲の流れや水音、緑の濃淡、光の移ろいといった日々の繊細な変化を感じ取れる環境を整えています。その場所に満ちる特別な光や気配が、創作の源泉となる。自然と向き合いながら、再びキャンバスへと向かうための静かな器です。
軽井沢テラス 小島光晴建築設計事務所
北向きの傾斜地に建つ、アートコレクターのための別荘です。各室を数珠状につなぎ、移動するたびに異なる景色と出会える構成とすることで、自然を「眺める」のではなく「体感する」ことを目指しました。部屋ごとに窓の形やプロポーションを変え、それぞれに固有の風景を切り取っています。また、1・2階を結ぶ階段をあえて外部に設け、暮らしの中で必ず自然に触れる動線を計画。光や風、湿度や音の変化を五感で受け取りながら、自然と深く向き合える静かな居場所となっています。
調布の家 株式会社 一級建築士事務所 アトリエマナ
調布の閑静な住宅街に建つ、ご夫婦のための終の棲家です。間口が狭く隣家が迫る敷地に対し、中庭やプライベートテラス、吹き抜けを立体的に取り込み、光と風、内外のつながりを確保しました。レンガや左官、木製ドアによる温かな外観に、光の変化を楽しむリビングや落ち着いた食事スペース、ご夫婦それぞれの書斎を計画。趣味や調度品を大切にできる、豊かな居場所を形にしています。
harmony *studioLOOP建築設計事務所
往来の多い道路に面した敷地に建つこの住まいは、4台分のガレージと大きなテラス、そして高いプライバシー性を実現するために計画されました。ガレージを建物内部へ引き込むことで、安全でゆとりある車の出入りを確保。2階のLDKに連続する大テラスはルーバーで包み込み、光や風を取り込みながら外部からの視線をやわらかく遮ります。居住空間だけでなく、ガレージやテラスといった余白を豊かに設計することで、上質な外観と都市的な暮らしを両立した住まいです。
美しが丘西の家I邸 株式会社 中村高淑建築設計事務所
アートディレクター・デザイナーであり、アーティストでもある伊波サチヨさんとご家族、2匹の猫が暮らす住まいです。建築をこよなく愛し、自邸を建築家に依頼することを夢見ていた伊波さんの人柄を映す、明るく品のある家。丘と空を望むLDKは、料理をしながら家族や友人と過ごせる開放的な空間とし、将来は子ども室をアトリエやSOHOに転用できるなど、家族の変化にも柔軟に対応します。週末には友人や仕事仲間が集う、猫たちとともに暮らしを楽しむ住まいです。
Message from the sky 佐藤宏尚建築デザイン株式会社
「空を感じたい」という願いから生まれた、都心の住まいです。トップライトから取り込まれる光が、朝の澄んだ空や夏の日差し、夕暮れ、雪や雨上がりの景色を室内に映し出し、刻々と変化する空の表情を暮らしの中へ導きます。天然スレートの外壁や杉、土壁など自然素材を用い、コンクリートの蓄熱性を活かした床暖房も採用。光と影、素材の質感が響き合う、豊かな住環境をつくり出しています。
Fアトリエ 充総合計画一級建築士事務所
約32坪の敷地に建つ、日本画家のためのアトリエです。季節や時間、天候に左右されない均質な光を追求し、逆勾配のバタフライ屋根と十字型スリットから柔らかな自然光を採り込みました。漆喰仕上げの曲面壁が光を拡散し、空間全体を影の少ない理想的な制作環境で満たします。約4.6m×9.6mの無柱空間は大作の制作や搬出入にも対応。さらに雨水を睡蓮池へ導く仕掛けや和室を備え、創作と自然が静かに響き合う場となっています。耐震・制震性能にも配慮し、安心して創作に没頭できる建築です。
土間と回廊の家 ジュウニミリ建築設計事務所
愛知県長久手市に佇む、ギャラリーを内包したストイックな住まいです。建物の中心に据えられた中庭を手がかりに、日々の営みが美しく展開するプランです。1階の床には全面に土間コンクリート金鏝仕上げを採用し、外壁もモルタル金鏝仕上げに撥水剤塗布という、職人の手仕事の跡を残す湿式の簡素な素材で統一。余計な装飾を削ぎ落としたシンプルかつ静謐な空間が、住まい手の日常とアートをモダンに引き立てます。
K氏のアトリエ 塔本研作建築設計事務所
京都府八幡市に建つ、画家夫婦のためのアトリエ付き住宅です。限られた予算の中で創作活動を最優先に考え、1階に伸びやかなアトリエ、2階にコンパクトな住空間を配置しました。構造体を現しとした素朴な空間は、制作の場としての機能性を高めると同時に、建築そのものの力強さを感じさせます。トップライトから降り注ぐ光が居間を満たし、創造性と日常が穏やかに交差する住まいとなっています。