コンクリートの家|設計事務所による注文住宅実例18選 著者:クラスキ編集部
コンクリートの家では、コンクリートが持つ素材そのものの質感や存在感が、住まいの印象を形づくります。壁や天井などにコンクリートを取り入れることで、端正で落ち着いた空間が生まれる一方、木や布、植栽など異なる質感の素材と組み合わせることで、やわらかな表情が加わることもあります。光がコンクリートの面に落とす陰影や、時間によって変化する明るさも、素材の魅力を引き立てる要素です。構造としての力強さと、日々の暮らしを受け止める静かな空間が重なり合うところに、コンクリートを用いた住宅ならではの表情があります。コンクリートの素材感が実際の住宅でどのように建築として表現されているのか、設計事務所による注文住宅の実例を紹介します。
浸水対策の3階建て住宅|wasat ポーラスターデザイン一級建築士事務所
河川氾濫による約2mの浸水リスクを想定し、安全性と日常の快適性、災害後の復旧性を追求した住まいです。LDKや水回りを2階に集約し、止水対策や設備機器の高所配置、太陽光発電と蓄電池によって、非常時も暮らしを維持できる構成としました。1階の内装や断熱材にも、浸水後の乾燥・復旧を見据えた工夫を採用。木造の心地よさとコンクリートの堅牢性を組み合わせ、災害への備えを日常の住まいに溶け込ませています。
Fproject 株式会社 松本直子建築設計事務所
二世帯住宅と賃貸住宅を組み合わせた、RC造の複合住宅です。奥行きのある敷地に中庭を設けることで、共用部や住戸の奥まで自然光と緑を届け、都市の中でも心地よい環境を生み出しました。ステンレス金網の階段や杉材の型枠によるコンクリートの表情豊かなファサードが、光と影の変化を映し出します。住戸ごとの暮らしに合わせた間取りには、中庭や庭を身近に感じる工夫を施し、茶室や充実したワークスペースなど、住まい手の趣味と豊かな時間を育む空間を備えています。
清水谷の家 ARCHIXXX眞野サトル建築デザイン室
市街地に建つ、祖父・夫婦・子ども2人の三世代が暮らす住まいです。外周には帯状の壁を巡らせ、ダブルスキンのような構成とすることで、外観にリズムを与えながら通行人の視線を巧みに遮っています。コーナーを斜めに切り取った開口からは光がこぼれ、無機質になりがちな外観に柔らかな表情を添えます。内部には2つの中庭を設け、各室へ穏やかな光を届けるとともに、煙突効果を生かして自然な空気の循環を促しています。
PHASE DANCE 株式会社 廣部剛司建築研究所
鬱蒼とした傾斜地に立つ、ヒメシャラの大樹との共存を目指した住宅です。樹木を中心に据えながら、各空間に応じて角度やボリュームを自在に調整し、対称性にとらわれない求心的な構成としています。RC造の基盤に木造架構を載せ、三角形構面の頂点を操作して屋根形状を連続的に変化させました。中央のピークから絞り込まれる両端は、中2階や吹抜を介して1階とつながり、内部に連続的なシーンを生み出しています。
隅切り敷地を活かした小さな家|街角の家 株式会社 山本嘉寛建築設計事務所
市街地の街角に建つ、小さな戸建て住宅です。二面道路に面する敷地条件に対し、スリット窓によってプライバシーを確保しながら、建物をT字型に配置して三角形の庭を生み出しました。居間や水まわりを庭を囲むように配置することで、コンパクトな規模の中にも広がりと開放感を実現。床や造作キッチンにはモルタルを用い、木の色味を丁寧に整えることで、素材の豊かさとミニマルな美しさが共存する空間に仕上げています。
Smallest 佐藤宏尚建築デザイン株式会社
敷地面積37.7㎡、建築面積7.8坪という極小の敷地に建つ、地上5階の都市型狭小住宅です。居室を縦に積み重ね、階段室とエレベーターをまとめることで、限られた面積を無駄なく活用しています。全面ガラス張りの階段室が東西の視線をつなぎ、宙に浮くキッチンやカウンターが圧迫感を軽減。コンクリート打ち放しと最小限のディテールによって、素材と階段の造形美を際立たせています。
植物と暮らす家 根岸達己建築室
土地探しからお手伝いした住宅です。施主は仕事の拘束時間が長く、余暇を植物とくつろぐ、流行に左右されない空間を望まれました。敷地特性を生かし、リビング、ワインや外ごはんを楽しむデッキ、花と緑の庭をひとつながりに配置し、境界を曖昧にしています。内外が一体となり、植物と暮らす住まいとなりました。
next つくば市 中庭のあるRC造の家 e do design 一級建築士事務所
「next」―60歳から始まる、次の人生を楽しむためのセカンドハウスです。これまで築き上げたビジネスを手放し、新たなステージへ進むための場所として、創作活動を楽しむスタジオやシアター機能を備えた空間、ゆったりと過ごせるLDK、サウナやトレーニングルームなどを計画しました。仕事、趣味、健康、暮らしのすべてを豊かに包み込み、これからの時間を思い切り楽しむための住まい。人生の新たな扉を開く、わくわくに満ちた「next」です。
ST2-Kyoto 澤村昌彦建築設計事務所
4つの庭を内包する、オーディオのためのコートハウス
八潮のガレージハウス ことこと設計室
三方向を隣家に囲まれた住宅地に建つ、5人家族のための住まいです。プライバシーの確保と開放感の両立をテーマに、1階にはバイクガレージを備えたコンクリート打放しの趣味空間を、2階には木の温もりに包まれた大らかなLDKを配置しました。中央の螺旋階段が空間を立体的につなぎ、トップライトから降り注ぐ光が住まい全体に広がりをもたらします。道路側に開口を設けない構成でありながら、素材や光の扱いを丁寧に積み重ねることで、明るく伸びやかな住環境を実現しています。
東雪谷の家 株式会社 中村高淑建築設計事務所
呑川沿いの約9坪の敷地に建つ、地下を含む4層・延床21坪の狭小住宅です。両親が暮らした土地への思いを受け継ぎ、狭さを楽しむ住まいを目指しました。厳しい斜線制限には、機能ごとに分節したスキップフロアで対応しています。レベル差と螺旋階段が空間に豊かな変化を与え、独特の屋根形状が印象的な、静謐で凛とした佇まいをつくり出しています。
Dwelling of drummer 充総合計画一級建築士事務所
8坪の敷地に計画された、ドラムスタジオ併設のサテライト住居です。半地下のRC造スタジオは6帖未満ながら高天井の本格防音空間とし、厚い壁・床・天井により重低音や振動まで外部へ伝えない性能を確保しています。上階の木造住居は、緑の借景や抜けのある眺望を取り込み、約8帖半とは思えない居心地を実現しました。段差のある床はカウンターや腰掛けとして多用途に機能し、居場所の選択性を生み出しています。同時にその段差は音の拡散にも寄与し、良好な音響環境を支えています。限られた空間に、音楽と暮らしが凝縮された住まいです。
甲子園の家 Abax Architects
街の記憶を宿す石垣をそのまま残し、鉄筋コンクリート造で構成した住宅です。ふたつの小さな中庭を介して光と風を巧みに取り込みながら、外部からの視線を遮り高いプライバシーを確保しています。柔らかな質感の素材を用いることで、堅牢な構造の中にも穏やかで優しい空間で構成された住まいです。
PIBRO 株式会社 SPAZIO建築設計事務所
仙台中心部の高密な市街地に建つ、都市住宅ならではの開放性を追求した住まいです。約30坪の限られた敷地の中に、中庭や吹き抜けを巧みに配置し、光と風を縦横に取り込むことで、周囲の環境から一歩切り離された伸びやかな内部空間を実現しています。幾重にも重なる光の層と視線の抜けが、住まいに透明感と奥行きをもたらし、都市の喧騒を忘れさせる心地よい居場所を創出。コンパクトな敷地からは想像できない、ダイナミックな広がりを感じさせる一邸です。
ヒョウタン 株式会社 MuFF
古い雑居ビルのワンフロアを住居にリノベーションしたプロジェクトです。コンクリートでできたがらんどうの空間に、クランクしたひょうたん型のスペースを挿入して三つに分割しました。そのヒョウタンが外部・内部や動線・居場所をぐにゃりと曲げて交錯させることで、家の中でピクニックをしているような心地よさをつくりだしています。
大洞の家 後藤耕太建築工房
新たに開発された住宅地の高台に建つ住まいです。美術館のような空間でコーヒーを淹れ、客人をもてなしたいという施主の思いから計画されました。南北に広がる山々の眺望を取り込むため、天井の高い筒状の空間を中心に構成し、床のレベル差によって視線の広がりと空間の変化を生み出しています。トップライトからの光が表情を変える玄関や、白を基調とした非日常的な水回りも特徴です。豊かな自然と静かな時間を味わいながら、客人を迎え入れるための住まいとなっています。
The Sunken Retreat 株式会社 ファーイースト・デザイン・ラボ
都心の閑静な住宅街に建つ住宅です。敷地は高低差約5mの傾斜地で、周囲を建物に囲まれた厳しい条件の中、地下を含む3層構成として住空間の面積を確保しました。スキップフロアで連続する居室と高さ約10mの階段吹き抜けを設け、トップライトからの光が地下まで届く計画としています。最上階は庭や屋上とつながる開放的な空間とし、地下の落ち着いた雰囲気との対比により、自然の渓谷のような立体的な住まいを実現しています。
軽井沢カウンターポイント PODA一級建築士事務所
軽井沢の傾斜地に建つ別荘で、うねるコンクリート屋根、段床、曲面壁が森を散策するような時間体験を室内に取り込みます。外観から内部を予期しにくい「自由と不可測」を志向し、屋根はアプローチで変容して訪問者を覆うアーチとなり、駐車場上の屋根上では山歩きが体験できます。屋根の起伏は天井に反映され、段床と樹幹状の曲面壁に設けられた本棚・キッチン・暖炉のニッチが多様な振る舞いと視線の変化を生み、眺望とポリフォニー的な風景を体感できます。