ミニマルデザインの家|設計事務所による注文住宅実例16選 著者:クラスキ編集部
ミニマルデザインの家では、余分な装飾を抑え、建物の形や素材、光、家具などの要素を整理することで、静かで端正な空間が生まれます。壁や天井の面をすっきりと見せたり、収納や建具を空間に馴染ませたりすることで、暮らしに必要なものを受け止めながら、視覚的なノイズを抑えた構成になることがあります。そこに自然光や素材の陰影が加わることで、簡潔な空間にも豊かな表情が生まれます。ものを減らすことだけではなく、空間を構成する一つひとつの要素が調和することに、ミニマルデザインの魅力があります。ミニマルデザインの家が実際の住宅でどのように建築として表現されているのか、設計事務所による注文住宅の実例を紹介します。
vida *studioLOOP建築設計事務所
密度の高い住宅街に建つ、郊外型の狭小住宅です。東・北を隣家、南を商店に囲まれる一方、西側には起伏の豊かな茶畑が広がります。厳しい容積率と北側斜線を踏まえ、2階にはLow-Eガラスの大開口を備えたLDKを計画しました。ワンルームの空間に天井いっぱいの収納とドライエリアを設け、1階には寝室と水回りをコンパクトに配置。プライバシーを守りながら借景を取り込み、街並みに明るいアクセントを添えています。
下鴨の住宅 株式会社 イン・エクスデザイン
約18.7坪のコンパクトな敷地に建つ、言葉とともに暮らすための住まいです。くの字に曲がる敷地形状を活かし、エントランスから続く階段と書架が空間の中心を形成。書架はそのまま2階へと連続し、書斎を包み込むように配置されています。1階のリビングからは庭の景色とともに本棚が視界に入り、日常の中で自然と本や言葉の存在を感じられる設計に。限られた面積の中に、知的な豊かさと静かな居心地を丁寧に織り込んだ一邸です。
館山の家 多田建築設計事務所
千葉県館山市の国定公園内に建つ、海と自然を楽しむためのセカンドハウスです。防風林越しに水平線を望む恵まれた環境を活かし、海側に大きく開いた開口と、隣家側を抑えた端正な構成を採用しました。釣りを楽しむための広い土間や、深い軒の濡れ縁が内外を緩やかにつなぎます。建具によって空間の使い方を柔軟に変えられるほか、特徴的な屋根架構が伸びやかな室内に個性を与えています。無駄を削ぎ落としたミニマルな住まいは、海風とともに豊かな時間を育みます。
ルーバー天井の家/2戸→1戸に 株式会社小木野貴光アトリエ一級建築士事務所
隣り合う2住戸を一体化し、明るさと開放感を追求したマンションリノベーションです。南西の角にダイニングを配置することで住戸全体に光を導き、中央のリビングを伸びやかな家族の居場所として計画しました。リビングに設けたルーバー天井が、内と外の境界を曖昧にし、テラスのような開放感を演出しています。木漏れ日のような光が広がる、心地よい住まいです。
彩都粟生南の家 ARCHIXXX眞野サトル建築デザイン室
新しく開発されたニュータウンに建つ住まいです。周囲に建ち並ぶ住宅からプライバシーを守るため、2階のLDKやバスルーム、テラスを外壁で囲み、コートハウスのような内向きの構成としました。外部からの視線を抑えながら、採光と通風は上部から取り込むことで、閉鎖感のない心地よい住環境を実現しています。1階はピロティ状の車路とし、駐車スペースを通り抜けられる計画に。敷地条件を生かし、暮らしやすさとプライバシーを両立した住まいです。
9T+ 芦田成人建築設計事務所
「9T+」は、わずか9坪の建坪に暮らしの中心となる空間を凝縮しながら、高い快適性を実現した長期優良住宅です。塀に頼らず視線を巧みに制御し、光や開放感を確保。断熱・気密性能を丁寧に高めることで、室内の温度差を抑え、一年を通して快適な環境を実現しています。性能計算に基づいた設計により、小さなエネルギーで効率よく暮らせる住まいに。コンパクトでありながら、豊かな居住性を備えた住まいです。
守口大日の住宅 一級建築士事務所 Coo Planning
大阪府守口市に建つ木造2階建ての住宅です。行き止まり道路の奥に位置する敷地条件から、周囲からの視線に配慮したプライバシー性の高い住まいを計画しました。外観は開口部を最小限に抑えたミニマルなデザインとし、吹抜け上部に設けた天窓から自然光を取り込むことで、明るく開放的なLDKを実現しています。さらに、設備機器や24時間換気システム、太陽光発電などにもこだわり、快適性と省エネルギー性を両立。都市住宅に求められる機能と暮らしやすさを備えた住まいです。
Smallest 佐藤宏尚建築デザイン株式会社
敷地面積37.7㎡、建築面積7.8坪という極小の敷地に建つ、地上5階の都市型狭小住宅です。居室を縦に積み重ね、階段室とエレベーターをまとめることで、限られた面積を無駄なく活用しています。全面ガラス張りの階段室が東西の視線をつなぎ、宙に浮くキッチンやカウンターが圧迫感を軽減。コンクリート打ち放しと最小限のディテールによって、素材と階段の造形美を際立たせています。
引き算の家|余計を省くマンションリノベーション 株式会社 山本嘉寛建築設計事務所
若いご家族向けのマンションリノベーションです。形式上3LDKの既存住戸はLDKが狭い状態でした。限られた予算と空間の中で天井や不要な間仕切りを撤去して大きなLDKをつくり、必要最小限のキッチンと可動棚を合板で製作しています。無垢フローリング上で半椅子座・半床座の生活ができる構成にしています。
Clip Box 吉デザイン設計事務所
都市の住宅地に建つ「Clip Box」は、コンパクトな規模の中に豊かな空間体験を生み出した住まいです。3枚の白い壁とモルタル仕上げの壁が重なり合う外観は、壁のレイヤーが生む陰影により、奥行きのある表情を与えています。内部はダイニングから階段を介して繋がるスキップフロア形式のリビング。必要な機能を収めたスムーズな動線によって、快適な生活空間が実現されています。
3×10 Court house 土浦の中庭のある家 e do design 一級建築士事務所
霞ヶ浦を望む土浦市港町の角地に建つ、家族のための住まいです。多くの住宅が南側に開く中、あえて東側へ大きく開き、L字型の構成によって光や風、景色を取り込む計画としました。1階には中庭を設け、LDKや仕事場が植栽や空とつながる心地よい場所に。霞ヶ浦の風景や移ろう季節を感じながら、家族の時間と仕事、日々の暮らしが自然に寄り添う住まいです。
東雪谷の家 株式会社 中村高淑建築設計事務所
呑川沿いの約9坪の敷地に建つ、地下を含む4層・延床21坪の狭小住宅です。両親が暮らした土地への思いを受け継ぎ、狭さを楽しむ住まいを目指しました。厳しい斜線制限には、機能ごとに分節したスキップフロアで対応しています。レベル差と螺旋階段が空間に豊かな変化を与え、独特の屋根形状が印象的な、静謐で凛とした佇まいをつくり出しています。
emsh 「ha」hosaka hironobu architect associate
「ホワイト」「ブラック」「シルバー」の3色のみで構成された、ミニマルな住まいです。大小のスクエア開口を巧みに配置し、内外の風景や日常の瞬間をまるで額装されたアートのように切り取ります。緻密に計算されたディテールが空間に端正な秩序を与え、光や風が建築全体を心地よく巡る環境を実現。さらに、住まい手が選んだ家具やインテリアが建築と呼応し、その純度を一層高めています。暮らしそのものを美しく引き立てる、静謐で洗練された住まいです。
江田の家 zeal architects
雄大な河川沿いに建つ一戸建て住宅の計画です。施主である弟家族が、祖父母と自身の幼少期を過ごした思い出の敷地を選び、記憶を次世代へと受け継ぐ住まいとして計画されました。既存住宅は老朽化のため手を加えず、その隣に新たな住まいを建て、かつての風景や記憶を建築に重ねています。切妻屋根のシルエットや川辺の眺めを継承しつつ、敷地条件に応じてボリュームを調整。内部は川側に全室を開き、日常の中に風景を取り込む構成としています。
校舎裏の家 an Archi-Lab. 一級建築士事務所
母娘二人が暮らすための、長年住み続けた実家の建替え計画です。南側に小学校校舎が迫る19坪の狭小地という厳しい条件の中、敷地南側に小庭と濡れ縁を設け、光や風、奥行き感を住まいへ取り込みました。内部には、プライバシーや開放性に応じた複数の居場所を配置し、光が家全体を巡る構成を実現。周辺環境と丁寧に向き合いながら、限られた面積の中に豊かな居住性を育んだ住まいです。「早く帰りたい家」という言葉が、その心地よさを物語っています。
Ha house 市井洋右建築研究所
兵庫県姫路市の閑静な住宅地に建つ、若い夫婦と幼い子どもの住まいです。白い2層の居室を、黒い波板仕上げのコートや水回りが囲み、周囲の視線を遮りながら採光と通風を確保しています。閉じた印象の外観とは対照的に、内部は明るく開放的です。白と黒を基調に、畳コーナーや二つのコートが安らぎと遊び心を添えています。キッチンを中心に家事動線を整えた、家族の時間と個々の時間を大切にできる住まいです。