土間リビングの家|設計事務所による注文住宅実例15選 著者:クラスキ編集部
かつて土間は、屋外と屋内をつなぐ実用的な場所として使われてきました。近年ではその役割が広がり、家族が集まり、くつろぎ、趣味を楽しむ空間として計画される住まいも見られます。土間リビングの家では、靴のまま使える気軽さと、室内の快適さが同じ空間の中に共存しています。床の高さや素材の違いによって緩やかに用途が分かれ、リビングや庭とのつながりも生まれます。また、自転車やアウトドア用品、植物などを自然に取り込めるため、暮らしの個性が空間に表れやすいことも特徴です。土間は単なる玄関の延長ではなく、住まいの中心として機能することもあります。設計事務所による注文住宅では、この独特な空間がどのように住まい全体と結びつき、豊かな居場所をつくり出しているのかを実例から紹介します。
築128年の古民家改修 充総合計画一級建築士事務所
明治30年築の古民家に併設された築128年の蔵を、快適な住まいへと再生したリノベーションです。損傷した梁や傾いた基礎を補強し、重く開閉が困難だった建具も再利用しながら修復しました。断熱・気密性能を高めることで、夏は涼しく冬は暖かい住環境を実現。キッチン天板や階段、カウンターには既存の床材を再活用し、建物の記憶を継承しています。壁や天井の仕上げの一部は住まい手自らがDIYで施工し、歴史と愛着を感じられる住まいとなりました。
高尾の家 望月建築アトリエ
高尾山から流れる清流沿い、南に山並み、北に神社と竹林を望む敷地に建つ住まいです。周囲の自然に馴染むよう、建物は敷地形状に合わせてくの字に曲げ、重心にリビングを配置しました。南傾斜の地形に沿う屋根と連続する木の天井、床の段差が、平面的な広がりのなかに穏やかな領域を生み出します。軒先や軒天にも細やかに配慮し、家族と自然の移ろいをゆっくり楽しめる住まいを目指しています。
陶芸家の家 根岸達己建築室
富士山麓の森に隣接する敷地に計画された、4人家族のための住まいです。陶芸家のご主人とイラストレーターの奥様の創作拠点でもあり、森の風景を暮らしに取り込むことがテーマとなっています。リビングは森へ大きく開いた吹抜け空間とし、黒い土間が外部のスコリアと呼応しながら内外の境界を曖昧にしています。建物は高さを抑え、森に静かに寄り添うように佇んでいます。
うちのうち 小島光晴建築設計事務所
住宅密集地の奥に残された、空が大きく開ける「余白」のような環境から着想を得た住まいです。外遊びが好きな5人家族のために、家族の気配を感じながら外や地域ともつながる空間を目指しました。建物の南北に広い庭を設け、中央には用途を限定しない土間空間を配置。庭や各室と緩やかにつながることで、家族が自然と集う居場所となっています。また、道路や近隣との程よい距離感を保ちながら地域に開くことで、人々の交流が生まれる場を育み、住まいと街の豊かさを同時に引き出しています。
隅切り敷地を活かした小さな家|街角の家 株式会社 山本嘉寛建築設計事務所
市街地の街角に建つ、小さな戸建て住宅です。二面道路に面する敷地条件に対し、スリット窓によってプライバシーを確保しながら、建物をT字型に配置して三角形の庭を生み出しました。居間や水まわりを庭を囲むように配置することで、コンパクトな規模の中にも広がりと開放感を実現。床や造作キッチンにはモルタルを用い、木の色味を丁寧に整えることで、素材の豊かさとミニマルな美しさが共存する空間に仕上げています。
ヒョウタン 株式会社 MuFF
古い雑居ビルのワンフロアを住居にリノベーションしたプロジェクトです。コンクリートでできたがらんどうの空間に、クランクしたひょうたん型のスペースを挿入して三つに分割しました。そのヒョウタンが外部・内部や動線・居場所をぐにゃりと曲げて交錯させることで、家の中でピクニックをしているような心地よさをつくりだしています。
池田の家 若林秀典建築設計事務所
大阪府池田市の桜並木に囲まれた閑静な住宅地に建つ完全分離型二世帯住宅です。LDKからなる1階のボリュームを通り庭を挟んで独立配置し、その上に2階ボリュームを架け渡しました。軒下のトンネル状空間は駐車スペースで、車を動かせば両世帯の共有テラスとなりBBQや子供の遊び場として使われます。2階は主に寝室で構成され、中心のファミリールームが唯一の内部動線となり、将来は2室に分割して子供部屋にする計画です。
土間と回廊の家 ジュウニミリ建築設計事務所
愛知県長久手市に佇む、ギャラリーを内包したストイックな住まいです。建物の中心に据えられた中庭を手がかりに、日々の営みが美しく展開するプランです。1階の床には全面に土間コンクリート金鏝仕上げを採用し、外壁もモルタル金鏝仕上げに撥水剤塗布という、職人の手仕事の跡を残す湿式の簡素な素材で統一。余計な装飾を削ぎ落としたシンプルかつ静謐な空間が、住まい手の日常とアートをモダンに引き立てます。
ドマーノハウス 祐成大秀建築設計事務所
養老山脈の麓、緩やかな傾斜地に建つ、キャンプを愛する家族のための住まいです。地形を活かしたスキップフロアにより、キッチン・ダイニングからリビング、土間リビングへと空間が緩やかにつながります。最も低い位置に設けた土間リビングは、玄関土間やデッキと連続し、屋内にいながらキャンプのような開放感を楽しめる場所に。中間階には子どもの勉強や遊びの場を設けた、家族の気配を感じながら程よい距離を保てる住まいです。
相模原の家 内田雄介設計室
築約20年の戸建住宅を、3人家族のためにリノベーションした住まいです。美しい里山の風景に囲まれた環境の中で、既存住宅の確かな構造や趣を活かしながら、現代の暮らしに寄り添う空間へと再構築しました。部屋数を見直すことで生まれた「余白」が、空間同士や内と外を緩やかにつなぎ、新たな居場所を創出しています。新旧の時間と自然風景が心地よく溶け合う、家族の思い出を育む住まいです。
小浜の家 ARCHIXXX眞野サトル建築デザイン室
福井県小浜市、鉄工所を営む家族のための住まいです。隣接する工場との距離感を丁寧に読み取り、配置や素材を選定しました。内部は、鉄のフレームでつくられた手製の和室を中心に、家族が回遊できる動線を計画。随所に家人自らが手がけたスチール家具や階段を配し、鉄という素材の存在感と手仕事の温もりが響き合います。工場の営みを暮らしへと引き込み、家族らしさが随所に息づく、豊かな住まいです。
Villa SSK 株式会社 廣部剛司建築研究所
南房総の海と岩山に挟まれた敷地で、海と山を高さ方向につなぐ住まいを計画しました。大きなアーチ状の木造立体トラスとLVL壁によるトンネル状の架構が、海と空、岩山を感じる伸びやかな空間を生み出します。中庭は愛犬の遊び場であり、LDKと連続する「外のリビング」、水盤としても機能します。海側に張り出した水盤は、浴室やリビングから海面とつながって見えるよう設えました。ゲストルームやガレージも備え、豊かな風景と暮らしを結びます。
Y-house 石橋優介建築設計事務所/IAA
東京都有明のタワーマンションを改修し、都会における新しい働き方と暮らし方を提案する住まいです。日々の生活と仕事の場を柔軟に捉え、都市ならではの利便性を享受しながら、自分らしい時間を過ごせる空間を計画しました。住まいの可能性を広げ、これからの都市生活にふさわしい暮らしのかたちを目指しています。
Ta house 市井洋右建築研究所
閑静な住宅地に建つ、ホームパーティーを楽しむための邸宅です。木造金物工法とエンジニアウッドを採用し、工期とコストを抑えながら、柱や耐力壁に制約されない大空間と高い天井高を実現しました。内部と外部に同じ平面構成のLDKを対称に配置し、ガラス面でつなぐことで100畳を超える開放的な一体空間を形成しています。水回りは集約し、2階には個室とアートギャラリーとなるキャットウォークを設けています。
Hillside house 株式会社 ファーイースト・デザイン・ラボ
多摩丘陵の斜面に広がる住宅地に建つ住まいです。道路より半層下がった敷地条件を生かし、道路レベルと敷地レベルに2層のフロアを設け、それらをスキップさせてつなぐことで、約2.5層分の高さをもつ開放的な空間を実現しました。各フロアからは街のパノラマが広がり、上階からは空を感じる眺望を楽しめます。道路から半層下がった庭とつながるリビングは、プライバシーを保ちながらも伸びやかな空間となっています。