あらわし梁のある家|設計事務所による注文住宅実例18選 著者:クラスキ編集部
住まいの天井を見上げたときに現れる梁は、本来は建物を支えるための構造材です。しかし、あらわし梁のある家では、その存在が空間の個性をつくる重要な要素にもなっています。木の力強い質感や立体感のある構成は、室内に豊かな表情を生み出し、住まい全体の印象を大きく変えます。特に吹き抜けや勾配天井と組み合わされることで、視線が上へと広がり、実際の面積以上の開放感を感じられることもあります。また、梁の見せ方や木材の種類によって、素朴な雰囲気にも洗練された印象にもなります。構造を隠さずに見せることで生まれる魅力は、建築ならではの表現といえるでしょう。あらわし梁が住まいの中でどのような役割を果たしているのか、設計事務所による注文住宅の実例から紹介します。
大蔵の家 ことこと設計室
有機農業に取り組むご夫婦のために設計された、自然と調和する住まいです。暮らしの理念やものづくりへの姿勢に寄り添い、畑仕事の疲れをやさしく癒やす空間を目指しました。無垢の杉材や珪藻土など自然素材を用い、四季の移ろいや光の変化を感じられる開口計画を採用。外観も木の質感を活かし、時間とともに深まる風合いを楽しめます。さらに高性能な断熱仕様と放射冷暖房システムにより、一年を通じて快適な室内環境を実現。自然循環の思想を住まいにも反映した、穏やかで豊かな住宅です。
smoke hut I 設計室
のどかな田園風景の中に建つ住まいです。南側に広がる田園と遠くの山並みを取り込むため、おおらかな屋根を架け、周囲の風景に穏やかに溶け込む佇まいとしました。小さなお店を営みたいという要望から、住まいの中に通り土間を設け、店舗と暮らしが自然につながる構成に。住まいでありながら店のようでもあり、店でありながら住まいのようでもある、落ち着きと柔らかさを備えた空間です。
北窓の家 株式会社 富谷洋介建築設計
高台から街並みと山並みを望む敷地に建つ住まいです。南向きを前提とせず、この土地ならではの眺望を生かすため、LDKやスタディスペースを北側の大きな窓に沿って配置しました。やわらかな北光と吹き抜けが住まい全体に広がり、四季の移ろいを身近に感じられます。さらに、ボルダリングウォールや雲梯、スキップフロアを設け、子どもの成長を支える空間を計画。高断熱・高気密性能を備え、快適性と豊かな暮らしを両立しています。
大屋根の下に集う暮らし 株式会社 MuFF
丹波篠山の豊かな自然に囲まれた里山に建つ住まいです。山並みや雑木林を望む恵まれた環境の中で、建築と自然が穏やかに溶け合うあり方を追求しました。土の塊のような三つのボリュームを配置し、その間に生まれた空間を自然へ開かれたリビングとして計画。囲炉裏や薪ストーブを囲みながら、人と人が集い、火を眺め、季節の移ろいを感じる時間が流れます。自然との深い関係性を暮らしの中心に据えた、原風景を思わせる住まいです。
山陰の住まい 木村哲矢建築計画事務所
二方を道路に囲まれた敷地に建つ、落ち着きと品格を備えた平屋の住まいです。通風と採光のために庭を随所に配し、主庭に沿って室を雁行させることで、視線の広がりと豊かな回遊動線を生み出しました。深い軒を持つ大屋根が室内をおおらかに包み、天窓からの光は障子と壁を介して柔らかく拡散します。素材の表情と陰影を丁寧に重ね、時を重ねるほど味わいを増す、品格ある住まいです。
戦前の賃貸向け京町家の蘇生|昭和小路の長屋 株式会社 山本嘉寛建築設計事務所
京都市東山区の戦前長屋を子育て世帯・高齢者向け賃貸にリノベーションしました。表層を撤去して京町屋特有の構造と坪庭と室内の連続性を確認しました。1階は和室2室をつなげた居間を中心に、坪庭を囲む見世の間と対面キッチンを一体利用できる間取りに変更。床は30mm厚の杉フローリング、壁は左官と合板、天井は2階床の荒板仕上げ。2階は補修と断熱材を付加した上で船底天井に変更。建具はグリッドプランを生かして再利用しています。
光をつかむ家|住宅密集地に小さく・安心・心地よく 株式会社小木野貴光アトリエ一級建築士事務所
住宅が密集する63㎡の敷地に建つ、光を巧みに取り込んだ住まいです。南側道路に面しながらも周囲の建物によって日照条件が厳しい環境の中、吹き抜けを活用して2階からの光を1階へと導きました。まるで滝のように降り注ぐ自然光が住まいの隅々まで届き、限られた敷地とは思えない明るさと開放感を実現しています。都市住宅の課題を、光のデザインによって解決した住まいです。
逗子のスタジオハウス 株式会社 廣部剛司建築研究所
プロギタリストのための、スタジオ付き住宅です。地下工事を避け、「箱の中に箱を入れ込む」構成とセルロースファイバー、防振壁によって遮音性を確保しています。1階の壁量を生かし、2階には柱のない大屋根の下に生活機能を配置しました。構造を露わにした力強い架構に、小さな開口部と天窓からの光、風の道が陰翳のリズムを生み出します。必要から始まった計画は、建築のプリミティブな力へと結実しています。
小谷の家 暮らしの醸造所
三叉路に面する敷地に建つ夫婦+猫のための住宅で、左右の棟の高さを抑え三叉路からの圧迫感を軽減する計画です。既存植栽を生かし、2階居間は北側の畑越しに桜の大木を望む開口を配しています。南側は開口を低くし視線を下の植栽に向ける設計で、1階寝室群は光を抑えた落ち着いた空間としています。洗面・浴室は左右の棟より道路側に引き、濡れ縁を設け明るい水廻りとしています。道路側にはユズ、ビワ、シラカシ等を植えています。
S邸 SUR都市建築事務所
居住スペースを主に2階に配し、1階に茶室と自転車のファクトリーなど趣味のスペースを設けた中庭型の2階リビング住宅です。建て込んだ南北に長い敷地のため中庭を挟んで2階にLDKと寝室を配置し、LDKは高い勾配天井で南からの日照を取り入れます。
館山の家 多田建築設計事務所
千葉県館山市の国定公園内に建つ、海と自然を楽しむためのセカンドハウスです。防風林越しに水平線を望む恵まれた環境を活かし、海側に大きく開いた開口と、隣家側を抑えた端正な構成を採用しました。釣りを楽しむための広い土間や、深い軒の濡れ縁が内外を緩やかにつなぎます。建具によって空間の使い方を柔軟に変えられるほか、特徴的な屋根架構が伸びやかな室内に個性を与えています。無駄を削ぎ落としたミニマルな住まいは、海風とともに豊かな時間を育みます。
東浦の家 後藤耕太建築工房
知多半島の昔ながらの住宅街に建つ住まいです。地域とのつながりを大切にしながら、掘りごたつのある暮らしを望んだ施主の想いをかたちにしました。リビングの床を一部高くして掘りごたつを設け、南側からの視線と室内からの視線をずらすことで、開放感とプライバシーを両立しています。杉の無垢材を多用した空間は、時を重ねるほどに味わいを深めます。周囲の街並みに穏やかに馴染み、地域の風景とともに育っていく住まいです。
浜寺の家 一級建築士事務所 Coo Planning
大阪府堺市の閑静な住宅街に建つ住まいです。南側に広がる神社の緑を最大限に取り込みながら、「パリのアパルトマン」のような伸びやかな空間を目指しました。スキップフロアによる立体的な構成と高い天井が、住まいに豊かな広がりをもたらします。東西の壁面いっぱいに設えた本棚は暮らしの中心となり、十字框の窓やトップライトから差し込む光、風、緑が空間に彩りを添えます。素材の風合いとともに、家族の時間を重ねながら深みを増していく住まいです。
アトリエのあるすまい ティー設計室
設計アトリエを併設する自邸です。かつて散歩道として親しんだ場所に建ち、松林に覆われた浜辺の風景の記憶を継承するように、厚みのある木材で外壁を覆っています。白く塗装することで柔らかさを加え、周囲の環境に静かに馴染む佇まいとしています。内部は床や天井の高低差によって、アトリエや個の場、共有空間を緩やかに分節。ロフトやルーフバルコニー、植栽、階段が内外の広がりを多層的に生み出しています。
南吉成の家 株式会社 SPAZIO建築設計事務所
雑木林に囲まれた敷地の魅力を最大限に活かした住まいです。建物を敷地境界に沿って「く」の字に配置し、デッキを介して室内と森を緩やかにつなげました。東側には菜園や果樹を配したポタジェを設け、暮らしの中で自然の恵みを身近に感じられる構成に。リズミカルに設けられた開口が雑木林とポタジェの風景を室内へ取り込み、趣味室や和室、浴室からも豊かな緑を望めます。自然と家族の時間が心地よく重なり合う、豊かな住まいです。
校舎裏の家 an Archi-Lab. 一級建築士事務所
母娘二人が暮らすための、長年住み続けた実家の建替え計画です。南側に小学校校舎が迫る19坪の狭小地という厳しい条件の中、敷地南側に小庭と濡れ縁を設け、光や風、奥行き感を住まいへ取り込みました。内部には、プライバシーや開放性に応じた複数の居場所を配置し、光が家全体を巡る構成を実現。周辺環境と丁寧に向き合いながら、限られた面積の中に豊かな居住性を育んだ住まいです。「早く帰りたい家」という言葉が、その心地よさを物語っています。
中庭のある家 芦田成人建築設計事務所
周囲にゆとりある環境を持ちながらも、隣接するオフィスやアパートからの視線に配慮して計画された住まいです。建物の配置や開口部を丁寧に検討し、外部とのつながりを保ちながらも落ち着いて過ごせる中庭を中心に構成。風や光、草木の変化を身近に感じられる空間が、暮らしに豊かな季節感をもたらします。窓の先に広がる景色や遠くを走る列車の音、虫の声まで楽しめる、静かで心地よい日常を育む住まいです。
薪ストーブのある家 根岸達己建築室
かつて高架線の影響で北側に庭、南側に建物を寄せた「南北逆転の家」が並ぶ地域での建て替え計画です。旧来の住まいは日中も照明が必要で冬は寒く、明るく暖かな住環境が強い要望でした。30坪弱の敷地条件の中、プライベート空間を効率よくまとめ、パブリック空間にゆとりを確保しています。隣家が近接するためハイサイドライトやトップライト、縦格子から柔らかな光を取り込みました。キッチンは施主による制作で、小さくも機能的な空間となり、日々の料理が楽しみになる住まいです。