終の棲家となる家|設計事務所による注文住宅実例11選 著者:クラスキ編集部
長く住み続けることを前提とした住まいでは、流行や一時的な便利さだけではなく、年月を重ねながら暮らしに寄り添う空間が求められます。終の棲家となる家は、将来の生活の変化も見据えながら、落ち着いて過ごせる環境を整える住まいとして考えられています。平屋やコンパクトな動線、庭とのつながりなどが注目されることもありますが、その表現は一つではありません。家族構成や敷地条件、暮らし方によって建築の形は大きく異なります。それでも共通して見られるのは、長い時間を心地よく過ごすための空間づくりへの考え方です。日々の暮らしを支える場所として、住まいがどのように計画されているのかは実例ごとに異なる魅力があります。終の棲家というテーマが設計事務所による注文住宅の中でどのように形になっているのかを紹介します。
光をつかむ家|住宅密集地に小さく・安心・心地よく 株式会社小木野貴光アトリエ一級建築士事務所
住宅が密集する63㎡の敷地に建つ、光を巧みに取り込んだ住まいです。南側道路に面しながらも周囲の建物によって日照条件が厳しい環境の中、吹き抜けを活用して2階からの光を1階へと導きました。まるで滝のように降り注ぐ自然光が住まいの隅々まで届き、限られた敷地とは思えない明るさと開放感を実現しています。都市住宅の課題を、光のデザインによって解決した住まいです。
室内化したテラスを持つ家 設計事務所アーキプレイス
子育てを終えたご夫婦が、これからの時間をゆったり楽しむための終の住まいです。住まいの中心となる2階には、南東側に大きなテラスを設け、リビングとダイニングをその周囲に配置。開口を設けた屋根や壁により、屋外でありながら室内の延長のように、光や風、季節の移ろいを感じられます。1階の音楽室を起点とする床レベルの変化と吹抜けが奥行きを生み、3階の展望テラスからは西側の緑を望めます。
住み慣れた住まいをより良く・より快適に|愛でる家 株式会社 山本嘉寛建築設計事務所
奈良市北部に建つ築約40年の数寄屋風住宅のリノベーションです。耐震補強と断熱改修を行い、天井裏を活用して明るく開放的な居間を創出しました。和室は茶室へと再構成し、用途別の十分な収納を整備しています。既存の意匠を生かしながら、趣味の美術や骨董、庭を楽しめる環境を整え、将来にわたり快適に暮らせる住まいへと再生しました。
なごみキッチン 海いろ 株式会社 SPAZIO建築設計事務所
遠く仙台港を望む小高い丘の上に建つ、夫婦のための終の棲家です。牧歌的な風景に包まれた敷地に、穏やかで心豊かな暮らしを育むコンパクトな住まいが計画されました。限られた面積の中でも快適性を高めるため、諸室の配置や動線を丁寧に整理し、行き止まりのない回遊性のあるプランを採用。日々の移動を自然で心地よいものにしながら、暮らしにゆとりと広がりをもたらしています。風景とともに静かに歳月を重ねる、上質な住まいです。
多治見の家 多田建築設計事務所
岐阜県多治見市に建つ、ご夫婦二人のための終の棲家です。築約60年のご実家をリノベーションし、美しい瓦屋根の佇ましさを活かしながら、気候に合わせた快適な住環境を実現しました。南側の広縁を土間空間へと再構成し、季節に応じて風や光を取り込める伸びやかな住まいとしています。将来の小料理屋開業も見据え、路地のようなアプローチや客間を計画。LDKから寝室、水回りまでを回遊できるワンルーム的な構成とし、温度差の少ない快適で穏やかな暮らしを叶えています。
福島の家 Abax Architects
大阪市福島区に建つ都市型住宅です。前面道路も狭く、三方を高層建物に囲まれた厳しい環境の中で、「終の住処」としてホームエレベーターを備えた住まいを計画しました。当初はリフォームの検討から始まりましたが、検査済証の問題により新築へと転換しています。外壁にはケイミュー社のソリドを採用し、経年変化を楽しめる素材感を重視しました。バルコニーの笠木や軒下の押さえにはリン酸処理鉄板を用い、ディテールまで統一感のある都市的な外観を実現しています。
広がりを感じる設え-素材感の引き立つナチュラルモダンな邸宅|千葉・検見川の住まい タイラヤスヒロ建築設計事務所
間口5.8m、奥行21mの細長い敷地に計画された、60代ご夫婦のための「終の住処」です。敷地の奥行きを活かし、視線の抜けとリズムを意識した伸びやかな空間構成としています。素材には杉・桧・楢を用い、手触りや足触りまで心地よさに配慮しました。密集した住宅地においては、周囲との関係を丁寧に読み解き、南側をセットバックさせて採光と開放感を確保しています。さらに耐震等級3を満たす構造計画に加え、高断熱仕様と太陽光発電を備え、快適性と環境性能を両立した住まいです。
nest 柏市の中庭のある家 e do design 一級建築士事務所
都内から奥様のご実家近くへ移住したご夫妻のための、終の棲家となる住まいです。プライバシーを守りながら自然を感じられる中庭を中心に、採光や通風、耐震性、断熱性などの性能を丁寧に計画。中庭はLDKや動物たちの居場所とつながり、四季の移ろいや家族の時間を豊かに受け止めます。インコやフクロウとの暮らし、将来の在宅ワークにも寄り添う、安心と快適さに包まれた「nest(巣)」のような住まいです。
校舎裏の家 an Archi-Lab. 一級建築士事務所
母娘二人が暮らすための、長年住み続けた実家の建替え計画です。南側に小学校校舎が迫る19坪の狭小地という厳しい条件の中、敷地南側に小庭と濡れ縁を設け、光や風、奥行き感を住まいへ取り込みました。内部には、プライバシーや開放性に応じた複数の居場所を配置し、光が家全体を巡る構成を実現。周辺環境と丁寧に向き合いながら、限られた面積の中に豊かな居住性を育んだ住まいです。「早く帰りたい家」という言葉が、その心地よさを物語っています。
閑待居-私設美術館としての終の住処- 乗松得博設計事務所
北に美しい山並みを望む敷地に建つ、夫婦二人のための終の住処です。移築された昭和初期の古民家や枝垂れ桜、煤竹、大正期のステンドグラスなど、長い歳月を重ねてきた素材や風景を受け継ぎながら計画されました。瓦や石、土壁、漆喰、無垢材といった伝統的な素材を、現代の職人技術によって丁寧に再構築。歴史への敬意とこれからの快適な住環境を両立し、時を紡ぎながら穏やかに暮らすための住まいとなっています。
調布の家 株式会社 一級建築士事務所 アトリエマナ
調布の閑静な住宅街に建つ、ご夫婦のための終の棲家です。間口が狭く隣家が迫る敷地に対し、中庭やプライベートテラス、吹き抜けを立体的に取り込み、光と風、内外のつながりを確保しました。レンガや左官、木製ドアによる温かな外観に、光の変化を楽しむリビングや落ち着いた食事スペース、ご夫婦それぞれの書斎を計画。趣味や調度品を大切にできる、豊かな居場所を形にしています。