らせん階段のある家|設計事務所による注文住宅実例13選 著者:クラスキ編集部
階段は上下階をつなぐための設備ですが、住まいの中では空間の印象を大きく左右する存在でもあります。なかでもらせん階段は、限られた面積の中で上下を結びながら、住まいに特徴的な表情を与える建築要素として用いられています。曲線を描きながら立ち上がる形は視線を引きつけ、吹き抜けやリビングと組み合わされることで、空間に広がりや立体感を生み出します。また、素材や形状によって軽やかな印象にも重厚な印象にもなり、住まい全体の雰囲気づくりにも深く関わります。単なる移動のための設備ではなく、空間を構成する中心的な存在として計画されることも少なくありません。らせん階段のある家では、その形そのものが建築の魅力となり、暮らしの風景の一部となっています。設計事務所による注文住宅の実例を通して、らせん階段が住まいの中でどのような空間を生み出しているのかを見ていきます。
風のカタチ 小島光晴建築設計事務所
日本有数の猛暑地として知られる群馬県伊勢崎市に建つ住まいです。エアコンに頼らず快適に暮らしたいという要望に応え、日本の伝統的な住まいの知恵を現代的に再解釈しました。風の流れや地熱、季節ごとの日射を丁寧に読み解き、自然の力を活かした環境を構築。さらに、天井の勾配や床の段差、壁の高さによって視線を巧みにコントロールし、開放感とプライバシーを両立しています。完成から三度の夏を経た今もエアコンを設置せず、季節の移ろいを感じながら心地よく暮らせる住まいとなっています。
細長変形地の二世帯コートハウス 設計事務所アーキプレイス
都心の住宅密集地、北側道路に面した細長い変形敷地に建つ、木造3階建ての完全分離型二世帯住宅です。南西側に残された唯一の抜けを活かして中庭とデッキテラスを設け、周囲の視線を遮りながら、光と風を住まいの奥へ導いています。音楽を趣味とする共働き夫婦と、愛猫と暮らす叔母さまが、それぞれの独立した暮らしを大切にしながら安心して暮らせる、都市のコートハウスです。
西岡本のガレージハウス 株式会社 イン・エクスデザイン
神戸の山手に建つこの住まいは、海から市街地へと広がる眺望と愛車を同時に楽しめる、ほぼ平屋で完結する暮らしを提案しています。リビングダイニングを景色とガレージの間に配置し、主寝室や水まわりを機能的につなげた伸びやかな構成です。螺旋階段を包む吹き抜けのハイサイドライトからは柔らかな光が住まいの奥まで届き、明るさと開放感を創出。前庭やフロントコートを巧みに設けることで、プライバシーと防犯性を確保しながら、風が抜ける心地よい住環境を実現しています。
SAKURAの家 井上久実設計室
借景の桜を楽しむことをテーマに計画された住まいです。主な生活空間を2階に配置し、リビングを覆うルーバーによって外部からの視線を抑えながら、桜の景色を美しく切り取っています。ルーバーの角度は桜が最も映えるよう調整されており、日射も効果的に遮ることで、直射日光の入りにくい快適な室内環境を実現しました。
harmony *studioLOOP建築設計事務所
往来の多い道路に面した敷地に建つこの住まいは、4台分のガレージと大きなテラス、そして高いプライバシー性を実現するために計画されました。ガレージを建物内部へ引き込むことで、安全でゆとりある車の出入りを確保。2階のLDKに連続する大テラスはルーバーで包み込み、光や風を取り込みながら外部からの視線をやわらかく遮ります。居住空間だけでなく、ガレージやテラスといった余白を豊かに設計することで、上質な外観と都市的な暮らしを両立した住まいです。
上大岡の長屋 株式会社 中村高淑建築設計事務所
線路沿いの高低差のある敷地に建つ、完全分離型の二世帯住宅です。東西2方向の接道を活かして玄関を分け、将来の賃貸転用も見据えた計画としました。親世帯の1階には庭とつながるLDK、子世帯の2階には眺望を楽しむ広いデッキを配置。デッキのトップライトから親世帯の灯りがもれる仕掛けが、世代間の気配を伝え、互いを思いやる暮らしを育みます。
U邸 SUR都市建築事務所
2017日本エコハウス大賞優秀賞・会場賞を受賞した、池袋近くの都市型3階建てゼロエネ住宅です。変形敷地の余白を生かして多様な外部空間を内部に取り込み、シンプルな矩形平面に変化と奥行きを与えています。SII(環境共生イニシアティブ)認定のZEHで、全館をゼロエネルギーで365日快適に保てます。
sha-la つくばの家 e do design 一級建築士事務所
つくば市、洞峰公園近くの住宅街に建つ、30坪の敷地に計画した家族の住まいです。限られた敷地の中で、ガレージと庭を両立し、光や視線を巧みに導くために取り入れたのが「斜め」のライン。外観に奥行きと個性を与える2本の斜め壁と、家の中心を貫くらせん階段が、空間に豊かな広がりを生み出しています。トップライトから光を届け、家族の気配をつなぐ階段を軸に、暮らしが穏やかに広がる、清々しく柔らかな住まいです。
北区の家 Abax Architects
オフィスビルを住宅へとコンバージョンした住まいです。敷地の向かいにある寺院の景観をリビングからの借景として取り込み、日常に豊かな広がりをもたらしています。一方で窓際では墓地や電線が視界に入るため、間にコンサバトリーを設けて視線をやわらかく受け止め、外部環境との距離を調整しています。デザインセンスに優れた施主と共に丁寧に作り上げた、上質な住空間です。
拡張ボイドの家 archialpha
京都・二条城近くの間口5m、奥行き16mの敷地に建つ住宅です。古い町家の空間性を現代的に再構成し、生活の中心を2階に配置。中庭やテラス、ガラス張りの螺旋階段、透光性のある廊下を一体化した「拡張ボイド」が、光と風を建物の奥まで導きます。吹き抜けを介して各空間が立体的につながり、家族の気配を感じられる構成です。内と外が緩やかに交わるテラスは、くつろぎや食事、屋外シアターなど多彩な暮らしの場となります。
八潮のガレージハウス ことこと設計室
三方向を隣家に囲まれた住宅地に建つ、5人家族のための住まいです。プライバシーの確保と開放感の両立をテーマに、1階にはバイクガレージを備えたコンクリート打放しの趣味空間を、2階には木の温もりに包まれた大らかなLDKを配置しました。中央の螺旋階段が空間を立体的につなぎ、トップライトから降り注ぐ光が住まい全体に広がりをもたらします。道路側に開口を設けない構成でありながら、素材や光の扱いを丁寧に積み重ねることで、明るく伸びやかな住環境を実現しています。
中央の家 佐賀高橋設計室
狭小地に建つ木造3階建て住宅です。準防火地域という条件の中で、LDKには木製建具を採用し、素材感のある温かな空間を実現しています。水回りと個室を1階と3階に分散させることで、中間階に広がりのあるLDKを確保しています。螺旋階段が空間の中心に据えられ、コンパクトながらも豊かな広がりを感じる住まいです。
軽井沢の家 暮らしの醸造所
軽井沢の静かな別荘地に建つ、定年後の夫婦と愛猫のための住まいです。小川のせせらぎや木々の揺らぎが感じられる豊かな自然環境に寄り添い、建築が風景を主張しすぎないよう慎ましく計画されました。橋を渡りながら玄関へと向かうアプローチは、景色の変化を楽しむ体験そのものとなっています。窓から望む四季折々の風景や光と影の移ろいが、日々の暮らしに静かな感動をもたらす住まいです。