特別な時間を過ごす別荘|設計事務所による注文住宅実例8選 著者:クラスキ編集部
別荘は日常生活を送るためだけの住まいではなく、いつもとは異なる時間を過ごすための場所として考えられています。そのため、建築には周囲の自然や景色を取り込む工夫が数多く見られます。大きな窓から広がる眺望、外へと視線が抜ける空間構成、自然の光や風を感じられる居場所など、日々の暮らしとは少し異なる体験を生み出すことが重視されています。また、室内で過ごす時間そのものを豊かにするために、素材や空間の使い方にも特徴が表れることがあります。別荘は単に非日常を求める場所ではなく、その土地ならではの環境と向き合う建築でもあります。特別な時間を過ごす別荘が、設計事務所による注文住宅の中でどのような空間として実現されているのかを実例を通して紹介します。
軽井沢テラス 小島光晴建築設計事務所
北向きの傾斜地に建つ、アートコレクターのための別荘です。各室を数珠状につなぎ、移動するたびに異なる景色と出会える構成とすることで、自然を「眺める」のではなく「体感する」ことを目指しました。部屋ごとに窓の形やプロポーションを変え、それぞれに固有の風景を切り取っています。また、1・2階を結ぶ階段をあえて外部に設け、暮らしの中で必ず自然に触れる動線を計画。光や風、湿度や音の変化を五感で受け取りながら、自然と深く向き合える静かな居場所となっています。
S別邸 SUR都市建築事務所
城ヶ崎海岸から少し登った南東傾斜地に建つ、伊豆大島を望む別邸です。退職後の暮らしがメインとなる住まいで、温暖な気候と南東傾斜の立地が良好な日当たりと風通しを生み、無理なくパッシブデザインを採用しています。ワンルームのLDKを中心としたコンパクトな建物ですが、お子さん家族など大勢が集まることも考慮した計画です。
Villa SSK 株式会社 廣部剛司建築研究所
南房総の海と岩山に挟まれた敷地で、海と山を高さ方向につなぐ住まいを計画しました。大きなアーチ状の木造立体トラスとLVL壁によるトンネル状の架構が、海と空、岩山を感じる伸びやかな空間を生み出します。中庭は愛犬の遊び場であり、LDKと連続する「外のリビング」、水盤としても機能します。海側に張り出した水盤は、浴室やリビングから海面とつながって見えるよう設えました。ゲストルームやガレージも備え、豊かな風景と暮らしを結びます。
軽井沢カウンターポイント PODA一級建築士事務所
軽井沢の傾斜地に建つ別荘で、うねるコンクリート屋根、段床、曲面壁が森を散策するような時間体験を室内に取り込みます。外観から内部を予期しにくい「自由と不可測」を志向し、屋根はアプローチで変容して訪問者を覆うアーチとなり、駐車場上の屋根上では山歩きが体験できます。屋根の起伏は天井に反映され、段床と樹幹状の曲面壁に設けられた本棚・キッチン・暖炉のニッチが多様な振る舞いと視線の変化を生み、眺望とポリフォニー的な風景を体感できます。
Louver 佐藤宏尚建築デザイン株式会社
千葉県館山の丘陵地に建つ、海と山を望む週末住宅です。海から山へ伸びる軸線に対して建物を直交させ、両方向の眺望を取り込むとともに、半外部のバッファゾーンによって内と外を緩やかにつないでいます。開閉可能なルーバーは、日射や視線を調整しながら自然との距離を自在に変える装置として機能。室内に映る光と影の表情が、週末のゆったりとした時間を演出します。
高野川の別荘 越前良太デザイン研究所
京都・高野川沿い、松ヶ崎丘陵を望む100㎡の敷地に建つ住まいです。特別修景地区の厳しい条件のなかで、限られた床面積を最大限に活かしながら、伸びやかな空間を実現しました。RC・木・鉄それぞれの特性を活かした架構が、風や光、音、周囲の風景を住まいへと取り込みます。内と外のあいだに多様な居場所を生み出し、都市と自然を緩やかにつなぐ、開放感に満ちた住まいです。
八ヶ岳のセカンドハウス 根岸達己建築室
標高1600mの八ヶ岳に建つ、自然と創作のための山荘です。冬には氷点下20℃にもなる厳しい環境に応えるため、深い軒を持つ寄棟屋根を採用し、雄大な自然に穏やかに溶け込む佇まいとしました。泥や雪、水を伴う山暮らしに対応するため、収納を中心に回遊できる動線を計画。建具の開閉によって風除室や来客用動線へと柔軟に切り替えられます。機能性と快適性を丁寧に磨き上げた空間は、四季折々の自然を楽しみながら創作に向き合うための静かな拠点となっています。