障子のある家|設計事務所による注文住宅実例9選 著者:クラスキ編集部
障子は、和室に使われる建具という印象が強い一方、現代の住宅では光をやわらかく取り込むための空間要素としても取り入れられています。紙を通した光は直接的な明るさとは異なる穏やかな表情をつくり、室内に落ち着いた雰囲気をもたらします。また、障子を閉じれば視線をゆるやかに遮り、開ければ隣の空間とつながるなど、部屋同士の関係を変化させられる点も特徴です。木の格子がつくる細かな線は、壁や窓とは異なる繊細な表情を空間に加えます。伝統的な意匠をそのまま再現するだけでなく、現代的な住宅の中に取り入れることで、和の趣を感じさせながら現代の暮らしになじむ空間が生まれることもあります。設計事務所による注文住宅の実例を通して、障子が光や視線、空間のつながりにどのような変化を与えているのかを紹介します。
駒川の家 井上久実設計室
大阪市東住吉区の住宅地に建つ、18坪の敷地に計画された住宅です。商店街のにぎわいから距離を取るため、玄関を2階に設け、屋外階段の先にテラスを介して室内へと導く構成としました。テラスは内外を行き来する中間領域として機能し、暮らしに広がりをもたらします。2階を2棟に分け、和室を離れのように配置することで、日常に小さな豊かさと静けさを生み出しています。
山陰の住まい 木村哲矢建築計画事務所
二方を道路に囲まれた敷地に建つ、落ち着きと品格を備えた平屋の住まいです。通風と採光のために庭を随所に配し、主庭に沿って室を雁行させることで、視線の広がりと豊かな回遊動線を生み出しました。深い軒を持つ大屋根が室内をおおらかに包み、天窓からの光は障子と壁を介して柔らかく拡散します。素材の表情と陰影を丁寧に重ね、時を重ねるほど味わいを増す、品格ある住まいです。
囲炉裏のある趣味満載の家 設計事務所アーキプレイス
南北に長い段差のある変形敷地に建つ、ご夫婦の趣味を生かした終の棲家です。高度斜線に応えるよう3つのボリュームを連ね、端正な勾配屋根が印象的な外観を形づくっています。内部は掘り炬燵の囲炉裏を備えた和室を中心に、吹抜けやスキップフロアによって諸室やバルコニーが緩やかにつながる構成です。耐震等級3とHEAT20 G2レベルの高断熱・高気密性能を備え、開放感と快適性を両立。趣味を楽しみながら、これからの暮らしを豊かに育む住まいとなっています。
悠久楼+長屋式賃貸住宅 充総合計画一級建築士事務所
約40坪の敷地に、本格的な表千家の茶室と2世帯の賃貸住宅を融合させた複合建築です。茶室は四畳半席と水屋を可動間仕切りでつなぎ、お稽古や集いの人数に応じて柔軟に使える構成としました。賃貸部分は、コストを抑えながらも素材感や居住性を大切にし、床暖房や浴室乾燥暖房機など快適な設備も標準装備しています。伝統文化を受け継ぐ空間と都市居住の機能性を両立させた住まいです。さらに制震構造を採用し、繰り返しの大地震にも備えた安心感を備えています。
時を紡ぐ家 内田雄介設計室
東京郊外の造成地に建つ、母屋・離れ・納屋からなる6人家族の住まいです。長く暮らしてきた旧家の記憶を受け継ぐため、築約100年の建物に残る大黒柱や建具などの古材を丁寧に活かし、新たな暮らしの場へと再構築しました。変わりゆく周辺環境の中でも、時を重ねるほどに美しさを増す普遍的な佇まいを目指しています。過去から未来へ、家族の思い出や記憶を紡いでいく住まいです。
smoke hut I 設計室
のどかな田園風景の中に建つ住まいです。南側に広がる田園と遠くの山並みを取り込むため、おおらかな屋根を架け、周囲の風景に穏やかに溶け込む佇まいとしました。小さなお店を営みたいという要望から、住まいの中に通り土間を設け、店舗と暮らしが自然につながる構成に。住まいでありながら店のようでもあり、店でありながら住まいのようでもある、落ち着きと柔らかさを備えた空間です。
連甍乃家-和の寸法と素材でつくる- 乗松得博設計事務所
長年住み継がれてきた住まいの建て替えに際し、家族が重ねてきた時間や記憶を丁寧に受け継ぐことから設計を始めました。瓦や畳、左官、障子、襖といった、日本の住文化を支えてきた素材と職人の手仕事を大切にしながら、現代の暮らしに寄り添う住空間を構築しています。和の寸法がもたらす心地よいスケール感と自然素材の温もりが、身体に優しく馴染む空間を創出。懐かしさと新しさが穏やかに共存する、これからの暮らしを見据えた住まいです。
丁寧に暮らす家(リノベーション) 芦田成人建築設計事務所
定年後を見据え、ご夫婦二人のこれからの暮らしを整えるリノベーションです。「丁寧に暮らしたい」という住まい手の想いを受け、落ち着きのある上質な空間を目指しました。計画では、日常の中で自然とこもりたくなる“余白の居場所”を設け、住まいに多様な過ごし方を生み出しています。素材や天井高、開口部の形状や配置を丁寧に調整することで、場所ごとに異なる景色や居心地を演出。時間を重ねるほど愛着が深まる住まいです。
旗竿地の家 ジュウニミリ建築設計事務所
敷地は40〜50年前に位置指定道路によって宅地化された5区画の一画で、四方を隣地に囲まれた旗竿地です。開放性とプライバシーが共存する「本当に贅沢な空間」をテーマに、明るく守られた住まいが求められました。1階中央に食堂を据え、台所や和室、居間、縁側などが取り囲む構成とし、吹抜けにより上階から採光を確保。日本的な距離感の調整を暮らしに取り込み、日々の変化を楽しむ住まいとしています。