根岸達己建築室
アンティーク好きの家|設計事務所による注文住宅実例15選|時を重ねた品々と生きる住まい
著者:クラスキ編集部
年月を経た家具や器、建具に宿る風合いを愛するアンティーク好きにとって、住まいの設計は「どう飾るか」以上に「どう共存するか」という問いかけになります。既製の住宅では、天井高や開口部の比率、床や壁の素材感がアンティーク品の雰囲気と合わないと感じることも少なくありません。設計事務所は、施主が大切にしているコレクションや家具の寸法・色調を考慮しながら、空間全体のトーンを慎重に調整します。古材を構造や仕上げに用いたり、時代を超えた素材同士の対話を意識した空間構成を提案することも。新しい建築の中に、時間の記憶が自然に息づく住まいの事例を紹介します。
H邸
SUR都市建築事務所
SUR設計の2件目の免震住宅です。クライアントの強い希望で免震を採用し、地震時は最大約30cm動きます。収まりを工夫して基礎断熱と床下の室内化を実現し、吹き抜け周りの構造材に古材を用いて全体を統一したデザインとしています。温熱性能は高く、省エネ志向の暮らしにより5kW未満の太陽光でも発電量の約半分のエネルギーしか使っておらず、リアルZEHをはるかに超えています。
光の風の塔
井上久実設計室
大阪市生野区の住宅街に建つ住まいです。道路側は開口を抑え、中央階段上部から光と風を取り込む構成としました。東西にスキップフロアを設け、床段差の隙間を通じて空気と光が巡る計画としています。冬季は床下の暖気を階段で循環させ、室内環境を整えます。車庫や玄関土間は外部からの視線を遮りつつ一体的に使える空間とし、古材の既存家具と調和する落ち着いた住まいを実現しています。
西京極の住宅
株式会社 イン・エクスデザイン
生まれ育った実家へ戻る家族と母親のために計画された、築40年の木造住宅の二世帯リノベーションです。状態の良い既存躯体を活かしながら、必要最小限の構造改修と耐震補強を施し、新たな暮らしにふさわしい住空間へと再生しました。父親が手がけた庭も大切に残し、その風景と室内が呼応する構成に。古材や既存の木組みを随所に活かしながら、将来の可変性や本家としての受容力も備え、家族の記憶と新しい時間が穏やかに重なる住まいとなっています。
都会の民家
根岸達己建築室
骨董を愛する奥様の民家のような住まいと、息子さんの求めるRC打放しの堅牢な住宅という相反する要望を調和させて計画した住まいです。現代的な打放しの門構えの先には古材の蔵戸が設けられ、開けば荒木田土の土間が広がる吹抜空間へと続きます。長野で選び抜いた古材梁や杉板の床が、都市にいながらも懐かしさと安らぎをもたらし、時間の流れを穏やかに感じさせる住まいとなっています。
美浜の家
若林秀典建築設計事務所
LDK・主寝室・水廻りを中心に古民家の一部をリノベーションした住宅です。既存の構造体を極力残すことでこれまでの暮らしの記憶を引き継ぎながら新たな住まいへと変貌させています。現しになっている柱や梁・天井などが空間に変化を与え、木質化された内部空間によって暖かみのある居場所となりました。
多治見の家
多田建築設計事務所
岐阜県多治見市に建つ、ご夫婦二人のための終の棲家です。築約60年のご実家をリノベーションし、美しい瓦屋根の佇ましさを活かしながら、気候に合わせた快適な住環境を実現しました。南側の広縁を土間空間へと再構成し、季節に応じて風や光を取り込める伸びやかな住まいとしています。将来の小料理屋開業も見据え、路地のようなアプローチや客間を計画。LDKから寝室、水回りまでを回遊できるワンルーム的な構成とし、温度差の少ない快適で穏やかな暮らしを叶えています。
湖西の弁柄の住まい
木村哲矢建築計画事務所
湖西地方の民家を、受け継いだ記憶とこれからの暮らしが響き合う住まいへ改修しました。庭に面したお座敷は、仏壇を残しながら仏間と居間を欄間や紙障子で緩やかに分け、床の間などの壁を取り払って、居間・食堂・台所をL字型につなげています。食堂には吹き抜けを設け、閉ざされていた台所から庭まで視線が広がる構成です。書院障子などの建材や造作を再利用し、床暖房やペット対応の床材も採用。受け継いだ弁柄の紅色が、住まいを艶やかに彩ります。
大きな土間床のある暮らし|西山の住まい
タイラヤスヒロ建築設計事務所
のどかな田園風景に寄り添うこの住まいは、古民家に見られる土間を現代の暮らしへと再解釈した一邸です。玄関からキッチン、ダイニングへとフラットにつながる土間が、内と外の境界を曖昧にしながら空間を緩やかに結びます。廊下を設けず、土間・ダイニング・リビングを回遊性の高い構成とすることで、シンプルで合理的な暮らしを実現。構造材には新潟県産の越後杉を用い、地域資源を活かした地産地消の家づくりが、豊かな風景とともに息づいています。
時を紡ぐ家
内田雄介設計室
東京郊外の造成地に建つ、母屋・離れ・納屋からなる6人家族の住まいです。長く暮らしてきた旧家の記憶を受け継ぐため、築約100年の建物に残る大黒柱や建具などの古材を丁寧に活かし、新たな暮らしの場へと再構築しました。変わりゆく周辺環境の中でも、時を重ねるほどに美しさを増す普遍的な佇まいを目指しています。過去から未来へ、家族の思い出や記憶を紡いでいく住まいです。
House K/S
吉原環建築設計
三世代にわたって受け継がれてきた大家族住宅のリノベーションです。世代交代による暮らし方の変化に対応しながら、家族の記憶や愛着を継承し続ける“第二のリビング”として再構築されています。既存の意匠を残しつつ、真鍮や障子などの要素で新旧を緩やかに接続し、自由度の高い可変的な空間へと再編しています。ハレとケの境界を溶かしながら、家族の新たな時間が積み重なる住まいとなっています。
ヴィンテージマンションのリノベーション
佐藤宏尚建築デザイン株式会社
港区に建つ、日本初の高層マンションを現代に継ぐスケルトン・リノベーションです。既存の建築的価値を活かしながら、ガラスブロックやミラーによって光と視線が連続する伸びやかな空間を構成。イタリアンスタッコや貝灰漆喰、ウォールナットなど素材の質感を丁寧に重ね、既存の木製突板や大理石も再利用しています。さらに真空ガラスや独自の地中熱ヒートポンプを採用し、建築の記憶と快適性、環境性能を両立させています。
小高の母屋
株式会社 SPAZIO建築設計事務所
小高の改修は、「離れ」「母屋」「広場」からなる段階的なリノベーション計画です。2016年に「離れ」を住居として再生し帰還の拠点を整備、その後、親族の交流を担う「母屋」と「広場」を改修し、2019年に完成しました。「離れ」は現代的に一新する一方、「母屋」は囲炉裏や客間を保存し、煤竹や古材を再活用することで、歴史と記憶を継承しています。
閑待居-私設美術館としての終の住処-
乗松得博設計事務所
北に美しい山並みを望む敷地に建つ、夫婦二人のための終の住処です。移築された昭和初期の古民家や枝垂れ桜、煤竹、大正期のステンドグラスなど、長い歳月を重ねてきた素材や風景を受け継ぎながら計画されました。瓦や石、土壁、漆喰、無垢材といった伝統的な素材を、現代の職人技術によって丁寧に再構築。歴史への敬意とこれからの快適な住環境を両立し、時を紡ぎながら穏やかに暮らすための住まいとなっています。
UEHARA APARTMENT
kurachiffon 瀧内未来一級建築士事務所
築17年・38㎡のマンションを、夫婦の豊かな家時間を育む住まいへと再構成したリノベーションです。既存の魅力を活かしながら、収納や家具、キッチンを丁寧に刷新。視線が対角線に抜ける開放的な空間構成や、多目的に使える造作家具によって、限られた面積以上の広がりを実現しました。友人たちを招いて食卓を囲み、料理と会話を楽しむ、パリのアパルトマンのような心地よい暮らしが広がっています。
賃貸向け一戸建て住宅の最小限リノベーション|借家の家
株式会社 山本嘉寛建築設計事務所
本作は賃貸用として購入された中古物件のリノベーションです。最低限の性能更新を行い、古い仕上げ材の残す部分と交換する部分を慎重に仕分けし、新旧のバランスを取りながら色柄を加えて空間を引き締めました。
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