アンティークと暮らす家|設計事務所による注文住宅実例16選 著者:クラスキ編集部
アンティークと暮らす家では、時間を重ねた家具や建具、照明などが、住まいに独特の風合いをもたらします。古いものを単に置くのではなく、床や壁、木部などの素材と組み合わせることで、異なる年代のものが一つの空間に馴染むことがあります。使い込まれた家具の質感と、光の陰影が生まれる落ち着いた空間との組み合わせは、暮らしの中に時間の積み重なりを感じさせます。また、既存のものと新しくつくられた建築との対比によって、それぞれの魅力が際立つ場合もあります。新旧の素材や家具が重なり合うことで生まれる豊かな表情は、アンティークと暮らす住まいならではの特徴です。その魅力が実際の住宅でどのように建築として表現されているのか、設計事務所による注文住宅の実例を紹介します。
閑待居-私設美術館としての終の住処- 乗松得博設計事務所
北に美しい山並みを望む敷地に建つ、夫婦二人のための終の住処です。移築された昭和初期の古民家や枝垂れ桜、煤竹、大正期のステンドグラスなど、長い歳月を重ねてきた素材や風景を受け継ぎながら計画されました。瓦や石、土壁、漆喰、無垢材といった伝統的な素材を、現代の職人技術によって丁寧に再構築。歴史への敬意とこれからの快適な住環境を両立し、時を紡ぎながら穏やかに暮らすための住まいとなっています。
時を紡ぐ家 内田雄介設計室
東京郊外の造成地に建つ、母屋・離れ・納屋からなる6人家族の住まいです。長く暮らしてきた旧家の記憶を受け継ぐため、築約100年の建物に残る大黒柱や建具などの古材を丁寧に活かし、新たな暮らしの場へと再構築しました。変わりゆく周辺環境の中でも、時を重ねるほどに美しさを増す普遍的な佇まいを目指しています。過去から未来へ、家族の思い出や記憶を紡いでいく住まいです。
ヴィンテージマンションのリノベーション 佐藤宏尚建築デザイン株式会社
港区に建つ、日本初の高層マンションを現代に継ぐスケルトン・リノベーションです。既存の建築的価値を活かしながら、ガラスブロックやミラーによって光と視線が連続する伸びやかな空間を構成。イタリアンスタッコや貝灰漆喰、ウォールナットなど素材の質感を丁寧に重ね、既存の木製突板や大理石も再利用しています。さらに真空ガラスや独自の地中熱ヒートポンプを採用し、建築の記憶と快適性、環境性能を両立させています。
大きな土間床のある暮らし|西山の住まい タイラヤスヒロ建築設計事務所
のどかな田園風景に寄り添うこの住まいは、古民家に見られる土間を現代の暮らしへと再解釈した一邸です。玄関からキッチン、ダイニングへとフラットにつながる土間が、内と外の境界を曖昧にしながら空間を緩やかに結びます。廊下を設けず、土間・ダイニング・リビングを回遊性の高い構成とすることで、シンプルで合理的な暮らしを実現。構造材には新潟県産の越後杉を用い、地域資源を活かした地産地消の家づくりが、豊かな風景とともに息づいています。
House K/S 吉原環建築設計
三世代にわたって受け継がれてきた大家族住宅のリノベーションです。世代交代による暮らし方の変化に対応しながら、家族の記憶や愛着を継承し続ける“第二のリビング”として再構築されています。既存の意匠を残しつつ、真鍮や障子などの要素で新旧を緩やかに接続し、自由度の高い可変的な空間へと再編しています。ハレとケの境界を溶かしながら、家族の新たな時間が積み重なる住まいとなっています。
京丹後の民家 木村哲矢建築計画事務所
明治15年築の京丹後の民家を、暮らしの作法や間取りを受け継ぎながら改修しました。養蚕を支えた力強い梁や書院障子など、歴史を刻む意匠はそのままに、低い床や天井の変化を生かして現代の生活に馴染む空間へと整えています。段床によって既存和室との高低差を穏やかにつなぎ、耐震ダンパーによって構造性能も向上。古い民家の大らかなつながりを守りながら、これからの暮らしへと受け継がれていく住まいです。
都会の民家 根岸達己建築室
骨董を愛する奥様の民家のような住まいと、息子さんの求めるRC打放しの堅牢な住宅という相反する要望を調和させて計画した住まいです。現代的な打放しの門構えの先には古材の蔵戸が設けられ、開けば荒木田土の土間が広がる吹抜空間へと続きます。長野で選び抜いた古材梁や杉板の床が、都市にいながらも懐かしさと安らぎをもたらし、時間の流れを穏やかに感じさせる住まいとなっています。
GELATO PIQUE HOME kurachiffon 瀧内未来一級建築士事務所
築30年のマンション3戸をつなぎ、一つの住まいへと再生したフルリノベーションです。若いご夫婦が思い描いたのは、GELATO PIQUE CAFEのようなやわらかく心地よい空間。打ち合わせを重ねながら、奥様が家具や照明、アート、小物に至るまで一つひとつ丁寧にセレクトし、色や素材感を統一。お気に入りのアイテムに囲まれた空間は、カフェのような心地よさと住まいらしい温もりを兼ね備え、家族が自然体で過ごせる住まいとなっています。
小高の母屋 株式会社 SPAZIO建築設計事務所
小高の改修は、「離れ」「母屋」「広場」からなる段階的なリノベーション計画です。2016年に「離れ」を住居として再生し帰還の拠点を整備、その後、親族の交流を担う「母屋」と「広場」を改修し、2019年に完成しました。「離れ」は現代的に一新する一方、「母屋」は囲炉裏や客間を保存し、煤竹や古材を再活用することで、歴史と記憶を継承しています。
西京極の住宅 株式会社 イン・エクスデザイン
生まれ育った実家へ戻る家族と母親のために計画された、築40年の木造住宅の二世帯リノベーションです。状態の良い既存躯体を活かしながら、必要最小限の構造改修と耐震補強を施し、新たな暮らしにふさわしい住空間へと再生しました。父親が手がけた庭も大切に残し、その風景と室内が呼応する構成に。古材や既存の木組みを随所に活かしながら、将来の可変性や本家としての受容力も備え、家族の記憶と新しい時間が穏やかに重なる住まいとなっています。
H邸 SUR都市建築事務所
SUR設計の2件目の免震住宅です。クライアントの強い希望で免震を採用し、地震時は最大約30cm動きます。収まりを工夫して基礎断熱と床下の室内化を実現し、吹き抜け周りの構造材に古材を用いて全体を統一したデザインとしています。温熱性能は高く、省エネ志向の暮らしにより5kW未満の太陽光でも発電量の約半分のエネルギーしか使っておらず、リアルZEHをはるかに超えています。
多治見の家 多田建築設計事務所
岐阜県多治見市に建つ、ご夫婦二人のための終の棲家です。築約60年のご実家をリノベーションし、美しい瓦屋根の佇ましさを活かしながら、気候に合わせた快適な住環境を実現しました。南側の広縁を土間空間へと再構成し、季節に応じて風や光を取り込める伸びやかな住まいとしています。将来の小料理屋開業も見据え、路地のようなアプローチや客間を計画。LDKから寝室、水回りまでを回遊できるワンルーム的な構成とし、温度差の少ない快適で穏やかな暮らしを叶えています。
美浜の家 若林秀典建築設計事務所
LDK・主寝室・水廻りを中心に古民家の一部をリノベーションした住宅です。既存の構造体を極力残すことでこれまでの暮らしの記憶を引き継ぎながら新たな住まいへと変貌させています。現しになっている柱や梁・天井などが空間に変化を与え、木質化された内部空間によって暖かみのある居場所となりました。
大きな吹き抜けのある古民家の改修|きたまちの家 株式会社 山本嘉寛建築設計事務所
奈良市内の敷地では、異なる年代の建物が濡れ縁や中庭を介して連なっています。その中で一番古くて大きな納屋を、快適な生活が送れる住まいへ改修する計画です。納屋は元々材木倉庫として建てられ、半分が大きな吹き抜けで大部分が吹きさらしの状態でした。 劣化して柱梁から剥離した土壁を全て落とし、蟻害・腐朽を受けた柱梁を補強・交換し、断熱補強を行った上で吹き抜けを大きなLDKに転用、その周りに来客用和室、寝室、水廻り、収納、猫の部屋を整備しました。
光の風の塔 井上久実設計室
大阪市生野区の住宅街に建つ住まいです。道路側は開口を抑え、中央階段上部から光と風を取り込む構成としました。東西にスキップフロアを設け、床段差の隙間を通じて空気と光が巡る計画としています。冬季は床下の暖気を階段で循環させ、室内環境を整えます。車庫や玄関土間は外部からの視線を遮りつつ一体的に使える空間とし、古材の既存家具と調和する落ち着いた住まいを実現しています。
前庭のある家 Sデザイン設計 一級建築士事務所
鎌倉の住宅地にある旗竿敷地に建つ住まいです。敷地の先に広がる雑木林を取り込むことをテーマに、どの窓からも周囲の建物が視界に入らないよう計画しました。アプローチの先には紅葉を中心とした前庭を設け、玄関や和室から四季の彩りを楽しめます。2階リビングやデッキテラスでは、借景の緑に包まれるような開放感を満喫できます。アンティーク家具が映える落ち着いたインテリアと、充実した家事・収納計画により、風景と穏やかにつながる心地よい暮らしを実現しています。