茶室のある家|設計事務所による注文住宅実例10選 著者:クラスキ編集部
茶室のある家では、茶を楽しむための静かな空間が住まいの中に設けられることで、日常とは異なる時間の流れが生まれます。畳や障子、木などの素材がつくる落ち着いた表情に加え、光の入り方や庭とのつながりも茶室の雰囲気を形づくる要素です。茶室そのものを独立した場所として設ける構成もあれば、和の趣を取り入れた空間として住まいの中に馴染ませる表現もあります。小さな空間だからこそ、素材や光、庭の景色との関係が印象に残り、住まいの中に静かな余白が生まれることがあります。茶室のある家が実際の住宅でどのように建築として表現されているのか、設計事務所による注文住宅の実例を紹介します。
スキップフロアの家 根岸達己建築室
敷地の高低差を活かしたスキップフロアの住まいです。半階ずつずれた空間が縦横に広がり、吹き抜けを介して家族の気配がゆるやかにつながります。キッチンを中心に自然なコミュニケーションが生まれる、開放的な和モダンの空間です。玄関と一体的に計画された茶室や、壁一面に広がる大容量の本棚など、趣味を楽しむための工夫も随所に散りばめられています。さらに屋上には、読書とビールを楽しむための特別な居場所を用意。日常に小さな贅沢を重ねる、遊び心あふれる住まいです。
戦前の賃貸向け京町家の蘇生|昭和小路の長屋 株式会社 山本嘉寛建築設計事務所
京都市東山区の戦前長屋を子育て世帯・高齢者向け賃貸にリノベーションしました。表層を撤去して京町屋特有の構造と坪庭と室内の連続性を確認しました。1階は和室2室をつなげた居間を中心に、坪庭を囲む見世の間と対面キッチンを一体利用できる間取りに変更。床は30mm厚の杉フローリング、壁は左官と合板、天井は2階床の荒板仕上げ。2階は補修と断熱材を付加した上で船底天井に変更。建具はグリッドプランを生かして再利用しています。
木立に佇む家 設計事務所アーキプレイス
木立に囲まれた敷地に建つ、30代のご夫婦とお子さまのための住まいです。内と外が緩やかにつながる構成とし、リビングやダイニングから庭や周囲の緑を望めるよう計画しました。水まわりは南側や坪庭に面して明るさと風通しを確保。和室は茶会や宿泊に配慮し、LDKから少し距離を置いています。2階の書斎では、木立の向こうの景色を眺めながら、読書や仕事を楽しめます。光や風、四季の移ろいを身近に感じる住まいです。
S邸 SUR都市建築事務所
居住スペースを主に2階に配し、1階に茶室と自転車のファクトリーなど趣味のスペースを設けた中庭型の2階リビング住宅です。建て込んだ南北に長い敷地のため中庭を挟んで2階にLDKと寝室を配置し、LDKは高い勾配天井で南からの日照を取り入れます。
悠久楼+長屋式賃貸住宅 充総合計画一級建築士事務所
約40坪の敷地に、本格的な表千家の茶室と2世帯の賃貸住宅を融合させた複合建築です。茶室は四畳半席と水屋を可動間仕切りでつなぎ、お稽古や集いの人数に応じて柔軟に使える構成としました。賃貸部分は、コストを抑えながらも素材感や居住性を大切にし、床暖房や浴室乾燥暖房機など快適な設備も標準装備しています。伝統文化を受け継ぐ空間と都市居住の機能性を両立させた住まいです。さらに制震構造を採用し、繰り返しの大地震にも備えた安心感を備えています。
もくかみハコの家|練馬のジャパンディな戸建てリノベーション 株式会社小木野貴光アトリエ一級建築士事務所
中古住宅を購入した施主とともに既存の魅力を丁寧に読み解き、再構築したリノベーションです。小屋裏収納を開放的なロフトへと変え、吹抜けとつながる伸びやかな空間を実現しました。収納を兼ねた箱階段や障子、既存の古材を活かしながら、土間やコンパクトな和室を設けることで暮らしの幅を広げています。和の趣と北欧的な心地よさが調和する、ジャパンディスタイルの住まいです。
Fproject 株式会社 松本直子建築設計事務所
二世帯住宅と賃貸住宅を組み合わせた、RC造の複合住宅です。奥行きのある敷地に中庭を設けることで、共用部や住戸の奥まで自然光と緑を届け、都市の中でも心地よい環境を生み出しました。ステンレス金網の階段や杉材の型枠によるコンクリートの表情豊かなファサードが、光と影の変化を映し出します。住戸ごとの暮らしに合わせた間取りには、中庭や庭を身近に感じる工夫を施し、茶室や充実したワークスペースなど、住まい手の趣味と豊かな時間を育む空間を備えています。
小浜の民家再生 木村哲矢建築計画事務所
明治12年築の民家を、二世代の暮らしに合わせて再生しました。使われていなかった玄関土間を床張りのリビングダイニングへと改修し、天井を高くすることで光が降り注ぐ開放的な空間としています。和室との床高の違いを生かし、視線が庭へと抜ける構成に。豪壮な小屋組みを残した旧板間は、光と闇の対比が美しい趣ある玄関として蘇らせました。構造の補強や断熱にも配慮し、歴史ある民家の魅力を受け継いでいます。
ライブラリーコリドーのある家 株式会社 廣部剛司建築研究所
膨大な本やCDを家族の歩みとして受け継ぐ住まいです。専用書庫ではなく、玄関から続く13mの通路を「ライブラリーコリドー」とし、蔵書を暮らしの風景に取り込みました。二層にわたる書架は斜めの内壁によって三角形の断面を描き、各室を緩やかに結びます。道路側には茶室を配し、その奥にLDKとテラス、中庭を構成。全開口サッシュが内外をつなぎ、家族の知と生活が共有される場を生み出しています。
北鎌倉の家 多田建築設計事務所
北鎌倉の谷あいに佇む、藤棚に迎えられる住まいです。敷地と道路の約2.5mの高低差を活かし、地下をRC造、上部を木造とする混構造としています。玄関を抜けると路地のような空間が現れ、そのまま1階リビングへと自然に導かれます。生活動線は1階で完結し、くすの木のダイニングテーブルや鎌倉岩の土を用いた曲面壁を中心に、回遊性のある構成としています。地下には音楽室、北側には三畳の茶室を設け、暮らしに静かな遊びを添えています。外観は入母屋屋根の和の意匠、内観は石やアイアンを用いた有機的な表情でまとめています。