古民家再生|設計事務所による注文住宅実例7選 著者:クラスキ編集部
長い年月を経て受け継がれてきた古民家には、新築の住宅にはない独特の魅力があります。太い木材や伝統的な構造、長年使われることで生まれた風合いは、その建物が歩んできた時間そのものを感じさせます。一方で、現代の暮らし方と昔の住まい方には違いもあり、古民家再生では既存の魅力を残しながら、新しい生活に合った空間へと再構成する工夫が求められます。天井の高さや大きな梁、土間や庭との関係など、古民家ならではの特徴は、設計の考え方によってさまざまな表情を見せます。また、古い部分と新しい部分がどのように共存しているかも、住まいごとの見どころのひとつです。古民家再生というテーマが建築の中でどのように表現されているのか、設計事務所による注文住宅の実例を通してその魅力を読み解きます。
美浜の家 若林秀典建築設計事務所
LDK・主寝室・水廻りを中心に古民家の一部をリノベーションした住宅です。既存の構造体を極力残すことでこれまでの暮らしの記憶を引き継ぎながら新たな住まいへと変貌させています。現しになっている柱や梁・天井などが空間に変化を与え、木質化された内部空間によって暖かみのある居場所となりました。
浦田の家 越前良太デザイン研究所
敷地に刻まれた家族の記憶や時間の積層を尊重しながら、現代の暮らしへと再編集した古民家リノベーションです。吹き抜けや造作ソファーを設けて新たな居場所を創出する一方、古い建具や家具、窓格子などを巧みに再生。さらに既存の照明や建具を継承し、住まいの歴史を未来へとつなぎました。新旧の素材が織りなす空間には、過去・現在・未来が緩やかに重なり合い、家族とともに育つ住まいの豊かさが息づいています。
リノベーション・アパートメント/生まれ変わった、かわいい・カッコイイ 株式会社小木野貴光アトリエ一級建築士事務所
築約80年の建物を再生したリノベーションプロジェクトです。新築との比較検討を経て既存建物を活かす道を選び、複雑な増改築の履歴を読み解きながら構造補強を施しました。屋根材を外壁に用いたうろこのような意匠と三角屋根が印象的な外観は、街並みに馴染みながら個性を放ちます。住戸数を増やしつつ、土間や高天井、ルーバー空間など多彩な居場所を計画。歴史を受け継ぎながら、現代の暮らしに応える住まいへと生まれ変わりました。
京丹後の民家 木村哲矢建築計画事務所
明治15年築の京丹後の民家を、暮らしの作法や間取りを受け継ぎながら改修しました。養蚕を支えた力強い梁や書院障子など、歴史を刻む意匠はそのままに、低い床や天井の変化を生かして現代の生活に馴染む空間へと整えています。段床によって既存和室との高低差を穏やかにつなぎ、耐震ダンパーによって構造性能も向上。古い民家の大らかなつながりを守りながら、これからの暮らしへと受け継がれていく住まいです。
小高の母屋 株式会社 SPAZIO建築設計事務所
小高の改修は、「離れ」「母屋」「広場」からなる段階的なリノベーション計画です。2016年に「離れ」を住居として再生し帰還の拠点を整備、その後、親族の交流を担う「母屋」と「広場」を改修し、2019年に完成しました。「離れ」は現代的に一新する一方、「母屋」は囲炉裏や客間を保存し、煤竹や古材を再活用することで、歴史と記憶を継承しています。
築128年の古民家改修 充総合計画一級建築士事務所
明治30年築の古民家に併設された築128年の蔵を、快適な住まいへと再生したリノベーションです。損傷した梁や傾いた基礎を補強し、重く開閉が困難だった建具も再利用しながら修復しました。断熱・気密性能を高めることで、夏は涼しく冬は暖かい住環境を実現。キッチン天板や階段、カウンターには既存の床材を再活用し、建物の記憶を継承しています。壁や天井の仕上げの一部は住まい手自らがDIYで施工し、歴史と愛着を感じられる住まいとなりました。
戦前の賃貸向け京町家の蘇生|昭和小路の長屋 株式会社 山本嘉寛建築設計事務所
京都市東山区の戦前長屋を子育て世帯・高齢者向け賃貸にリノベーションしました。表層を撤去して京町屋特有の構造と坪庭と室内の連続性を確認しました。1階は和室2室をつなげた居間を中心に、坪庭を囲む見世の間と対面キッチンを一体利用できる間取りに変更。床は30mm厚の杉フローリング、壁は左官と合板、天井は2階床の荒板仕上げ。2階は補修と断熱材を付加した上で船底天井に変更。建具はグリッドプランを生かして再利用しています。