坪庭のある家|設計事務所による注文住宅実例11選 著者:クラスキ編集部
坪庭は、建物に囲まれた小さな庭を住まいの中に取り込む空間です。広い庭を確保することとは異なり、限られた場所に植栽や光、風を取り入れることで、室内から感じられる外部空間をつくります。窓の向こうに緑が見えることで、室内に自然の気配が生まれ、壁に囲まれた場所でありながら季節の変化を感じられることもあります。また、坪庭を挟んで部屋同士をつなぐことで、視線が抜けたり、空間同士の関係が変わったりする場合もあります。小さな庭そのものだけでなく、そこへ向かう窓や周囲の壁、床との関係によって、住宅の中にさまざまな景色が生まれます。限られた面積の中に自然を取り込む坪庭は、建物と庭の境界を考えるうえでも興味深い存在です。設計事務所による注文住宅の実例を通して、坪庭が光や緑をどのように室内へ取り込み、住まいの景色を形づくっているのかを紹介します。
戦前の賃貸向け京町家の蘇生|昭和小路の長屋 株式会社 山本嘉寛建築設計事務所
京都市東山区の戦前長屋を子育て世帯・高齢者向け賃貸にリノベーションしました。表層を撤去して京町屋特有の構造と坪庭と室内の連続性を確認しました。1階は和室2室をつなげた居間を中心に、坪庭を囲む見世の間と対面キッチンを一体利用できる間取りに変更。床は30mm厚の杉フローリング、壁は左官と合板、天井は2階床の荒板仕上げ。2階は補修と断熱材を付加した上で船底天井に変更。建具はグリッドプランを生かして再利用しています。
畳コーナーで家時間を楽しく暮らせる和モダンの木の家 一級建築士事務所 光設計
幹線道路近くの防火地域、19坪の敷地に建つコンパクトな木の住まいです。限られた面積の中に、小上がりの畳コーナーや造作キッチン、坪庭を丁寧に配置し、和モダンの落ち着きある空間を実現しました。内と外がゆるやかにつながり、暮らしに豊かな奥行きをもたらします。内装には自然素材を採用し、心地よい空気環境にも配慮。都市部にありながらも、穏やかで健やかな時間が流れる住まいです。
ある画家のアトリエ-静けさと緊張感を纏う創造の場- 乗松得博設計事務所
一人の画家が静かに創作へ向き合うために計画されたアトリエです。住まいのような安らぎとは異なる、ほどよい緊張感と静寂をまとった空間を目指しました。過度な演出を排し、雲の流れや水音、緑の濃淡、光の移ろいといった日々の繊細な変化を感じ取れる環境を整えています。その場所に満ちる特別な光や気配が、創作の源泉となる。自然と向き合いながら、再びキャンバスへと向かうための静かな器です。
斜格子の家 an Archi-Lab. 一級建築士事務所
代々受け継がれてきた土地に建つ、子育て世代のための建替え住宅です。周囲を建物や塀に囲まれた密集地という厳しい条件に対し、建物を敷地に対して斜めに配置することで、多方向から光と風を取り込みました。生まれた余白は周囲との適度な距離感をつくり、地域コミュニティとの緩やかなつながりも育みます。内部では視線や動線を巧みに操作し、外部からの視線を意識させない落ち着いた居住環境を実現。新旧の暮らしが交差する土地に、懐かしさと新しさが共存する住まいです。
鱗の家 佐藤宏尚建築デザイン株式会社
代沢の丘に建つ木造3階建ての住宅です。敷地の隅をR形状とし、連続する大壁でプライバシー性の高い内部と、公共性のある外部をやわらかに分節。斜め葺きのガルバリウム鋼板が、鱗のような表情を生み出します。6層の床による豊かな断面構成に、天井高4.2mのリビングや、内外が一体となる木製サッシを設置。古材を生かした和室、自然光を導く階段、書斎、薪ストーブと床暖房が、快適で伸びやかな暮らしを支えます。
甲子園の家 Abax Architects
街の記憶を宿す石垣をそのまま残し、鉄筋コンクリート造で構成した住宅です。ふたつの小さな中庭を介して光と風を巧みに取り込みながら、外部からの視線を遮り高いプライバシーを確保しています。柔らかな質感の素材を用いることで、堅牢な構造の中にも穏やかで優しい空間で構成された住まいです。
2.5階の家 archialpha
西側に間口5.4m、奥行き約10.7mの敷地に建つ、夫婦と男の子たちの住宅です。防火対策コストを抑えるため2階建てとし、縦方向の広がりを重視しました。2階の天井高いリビングダイニングを核に、半階上がったキッズスペース・テラスと対面するキッチン、隠れロフト収納、空中キャットウォーク、玄関を見下ろす吹き抜け、階段の7つのサブスペースが隣接して立体的に展開しています。1階には和室、WIC、トイレ、浴室と壷庭に面した寝室を配置しています。
S邸 SUR都市建築事務所
居住スペースを主に2階に配し、1階に茶室と自転車のファクトリーなど趣味のスペースを設けた中庭型の2階リビング住宅です。建て込んだ南北に長い敷地のため中庭を挟んで2階にLDKと寝室を配置し、LDKは高い勾配天井で南からの日照を取り入れます。
Gray ravine 株式会社 廣部剛司建築研究所
住宅が密集する26坪の敷地に計画された、家族4人のための住まいです。坪庭と階段室を住まいの中心に据え、曲面壁が反射する柔らかな光を内部へ導くことで、自然とのつながりを生み出しました。その構成は、峡谷に守られながら大地へ開かれた古代集落「メサ・ヴァーデ」に着想を得ています。床レベルの変化や造作ベンチが多彩な居場所を生み、小さな空間に豊かな奥行きをもたらします。光と暮らしが静かに重なり合う、繊細な住まいです。
西大海道の家 後藤耕太建築工房
一宮市の住宅地に建つ住まいです。敷地の東側には幼稚園があり、人通りの多い道路にも面していたため、外部の視線や環境を適度に遮ることが求められました。東側に大きな壁を設けて開口を抑え、中庭や坪庭を配置することで、外部からの視線を遮りながら自然を取り込む計画としています。外観は落ち着いた佇まいですが、内部には庭に囲まれた開放的な空間が広がります。適所に設けた庇が日射や雨を和らげ、リビングからは誰にも邪魔されない中庭の景色を楽しめる、リゾートのような心地よさを備えた住まいです。
Kaleidoscope Ⅳ 澤村昌彦建築設計事務所
最適なプライバシーを確保した、都市型コートハウス。