根岸達己建築室
アンティーク好きの家|設計事務所による注文住宅8選|時を重ねた品々と生きる住まい
著者:クラスキ編集部
年月を経た家具や器、建具に宿る風合いを愛するアンティーク好きにとって、住まいの設計は「どう飾るか」以上に「どう共存するか」という問いかけになります。既製の住宅では、天井高や開口部の比率、床や壁の素材感がアンティーク品の雰囲気と合わないと感じることも少なくありません。設計事務所は、施主が大切にしているコレクションや家具の寸法・色調を考慮しながら、空間全体のトーンを慎重に調整します。古材を構造や仕上げに用いたり、時代を超えた素材同士の対話を意識した空間構成を提案することも。新しい建築の中に、時間の記憶が自然に息づく住まいの事例を紹介します。
House K/S
吉原環建築設計
三世代にわたって受け継がれてきた大家族住宅のリノベーションです。世代交代による暮らし方の変化に対応しながら、家族の記憶や愛着を継承し続ける“第二のリビング”として再構築されています。既存の意匠を残しつつ、真鍮や障子などの要素で新旧を緩やかに接続し、自由度の高い可変的な空間へと再編しています。ハレとケの境界を溶かしながら、家族の新たな時間が積み重なる住まいとなっています。
H邸
SUR都市建築事務所
SUR設計の2件目の免震住宅です。クライアントの強い希望で免震を採用し、地震時は最大約30cm動きます。収まりを工夫して基礎断熱と床下の室内化を実現し、吹き抜け周りの構造材に古材を用いて全体を統一したデザインとしています。温熱性能は高く、省エネ志向の暮らしにより5kW未満の太陽光でも発電量の約半分のエネルギーしか使っておらず、リアルZEHをはるかに超えています。
美浜の家
若林秀典建築設計事務所
LDK・主寝室・水廻りを中心に古民家の一部をリノベーションした住宅です。既存の構造体を極力残すことでこれまでの暮らしの記憶を引き継ぎながら新たな住まいへと変貌させています。現しになっている柱や梁・天井などが空間に変化を与え、木質化された内部空間によって暖かみのある居場所となりました。
小高の母屋
株式会社 SPAZIO建築設計事務所
小高の改修は、「離れ」「母屋」「広場」からなる段階的なリノベーション計画です。2016年に「離れ」を住居として再生し帰還の拠点を整備、その後、親族の交流を担う「母屋」と「広場」を改修し、2019年に完成しました。「離れ」は現代的に一新する一方、「母屋」は囲炉裏や客間を保存し、煤竹や古材を再活用することで、歴史と記憶を継承しています。
都会の民家
根岸達己建築室
骨董を愛する奥様の民家のような住まいと、息子さんの求めるRC打放しの堅牢な住宅という相反する要望を調和させて計画した住まいです。現代的な打放しの門構えの先には古材の蔵戸が設けられ、開けば荒木田土の土間が広がる吹抜空間へと続きます。長野で選び抜いた古材梁や杉板の床が、都市にいながらも懐かしさと安らぎをもたらし、時間の流れを穏やかに感じさせる住まいとなっています。
市中に残された蔵のある邸宅の改修|阿倍野の屋敷
株式会社 山本嘉寛建築設計事務所
阿倍野の旧邸宅は複数棟で複雑な入母屋架構や大断面の太鼓梁、無垢の分厚い床板が残っていました。母屋中央に天井の高いLDKを配し、玄関・水回りを挟む回遊性のある動線計画としました。式台や床板を階段や造作材に転用、障子・框戸を補修し、配置を組み替えて再利用。増築部分や離れを撤去して、防水・構造耐力・採光を整理しました。
閑待居-私設美術館としての終の住処-
乗松得博設計事務所
北に山並みを望む敷地に、昭和初期の古民家を移築した母屋と離れを構え、夫婦二人の終の住処とした住宅です。樹齢を経た枝垂桜、数百年燻された煤竹、大正期のステンドグラスや異国の石像など、歴史を重ねたものがそこかしこに残ります。瓦・石・土壁・漆喰・無垢木といった素材を今の職人技術によってつくりあげ、これからの住環境を見据えた佇まいを実現しています。
大きな土間床のある暮らし|西山の住まい
タイラヤスヒロ建築設計事務所
のどかな田園風景に寄り添うこの住まいは、古民家に見られる土間を現代の暮らしへと再解釈した一邸です。玄関からキッチン、ダイニングへとフラットにつながる土間が、内と外の境界を曖昧にしながら空間を緩やかに結びます。廊下を設けず、土間・ダイニング・リビングを回遊性の高い構成とすることで、シンプルで合理的な暮らしを実現。構造材には新潟県産の越後杉を用い、地域資源を活かした地産地消の家づくりが、豊かな風景とともに息づいています。
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