勾配天井の家|設計事務所による注文住宅実例16選 著者:クラスキ編集部
屋根の形に沿って天井が斜めに広がる勾配天井は、室内に独特の高さと奥行きを生み出します。一般的な水平の天井とは異なり、視線が上へと導かれることで、同じ広さの空間でも伸びやかな印象が生まれることがあります。高い位置に設けられた窓から光が差し込んだり、梁や木材などが天井の形とともに見えたりすることで、空間そのものに豊かな表情が加わることも特徴です。また、リビングやダイニングなど人が集まる場所だけでなく、住まいのさまざまな場所で勾配を生かした表現が見られます。天井は普段あまり意識しない部分だからこそ、その形が変わることで住宅の印象は大きく変化します。設計事務所による注文住宅では、屋根と室内の関係を生かした勾配天井が、どのような空間の広がりや表情を生み出しているのか、実例を通して読み解きます。
街景の家 株式会社 富谷洋介建築設計
土地探しから共に進め、数多くの候補地の中から札幌の街並みを見渡す高台に建つ住まいです。眺望をただ取り込むのではなく、街の風景と出会う瞬間そのものを設計。エントランスでは景色をあえて見せず、階段を上がった先の2階LDKで、街並みと空が一気に広がる構成としました。朝の光から夕景、夜景へと移ろう都市の表情を日常に取り込み、街の喧騒とはほどよい距離を保ちながら、穏やかに暮らせる住まいです。
彦根の家 井上久実設計室
彦根城近くの落ち着いた住宅地に建つ住まいです。往来の多い道路に面しながらも、静かで豊かな暮らしを実現するため、大小の建物ボリュームと中庭を交互に配置した構成を採用しました。それらを貫く“路地”は、単なる通路ではなく、リビングや中庭と緩やかにつながりながら空間に奥行きと変化をもたらします。視線や風、光が建物と中庭の間を行き交い、穏やかな静けさの中に多彩な居場所を生み出しています。竹張りの勾配天井が連なる屋根の表情を室内にも映し出し、自然素材のやさしい質感が住まい全体を包み込んでいます。
東員の平屋 祐成大秀建築設計事務所
ダイニング横の小部屋を、子どもの勉強や読書、リモートワークにも使える多目的な居場所として計画した住まいです。さらに、はしごで上がる小屋裏のロフトには、一人で静かに過ごせるこもり空間や趣味の場を設けました。リビング・ダイニングと緩やかにつながりながら、それぞれが異なる距離感で過ごせる構成が特徴です。家族の気配を感じつつ、必要なときには一人の時間も楽しめる、心地よい暮らしの場となっています。
西岡本の家 Abax Architects
神戸市の山手、高級住宅街に建つ住まいです。屋根は六甲山の稜線に呼応するように架けられ、周囲の風景に静かに溶け込む佇まいとしています。リビングは南の広い庭と中庭テラスに挟まれ、たっぷりと光が差し込む開放的な空間です。敷地内に散りばめられた植栽が時間とともに成長し、四季の移ろいとともに住まいの表情を豊かにしていきます。自然と都市が響き合う、穏やかな暮らしの器となっています。
南山の家 内田雄介設計室
丘陵地を切り開いた開発地に建つ住まいです。周辺環境の変化に左右されない普遍的な美しさと、時の移ろいを穏やかに受け入れる住まいを目指して計画しました。中庭と吹抜けを効果的に配置することで、建物全体に光と風が巡る開放的な空間を実現。リビングのフルオープン窓は内と外を緩やかにつなぎ、豊かな緑を暮らしの中へ取り込みます。自然の気配を身近に感じながら、四季とともに心地よく暮らせる住まいです。
高台の景色を生かしたピアノ教室のある家 芦田成人建築設計事務所
眼下に広がる景色を望む高台の住まいを求め、土地所有者との直接交渉を経て実現した住まいです。将来、子どもたちの選択肢が広がる立地も土地選びの決め手となりました。ピアノ講師である施主のため、セルロースファイバーなどを用いた防音対策を施し、周囲を気にせず演奏できる環境を整えています。眺望を生かすため生活の中心を2階に置き、音と暮らしを巧みに切り分けた上下逆転型の構成です。
浄明寺リノベ 佐賀高橋設計室
築60年の木造平屋をリノベーションした住まいです。既存の平面に斜めの木の壁を作り、一部を勾配天井とすることで空間にリズムを与えています。猫間障子からやわらかな光が差し込み、グレーの壁は黒板としても機能します。壁には愛猫のための小さな通路を設け、家具的なキッチンと業務用キッチンを組み合わせるなど、細やかな工夫が随所に散りばめられた住まいです。
friends *studioLOOP建築設計事務所
ご夫婦と母親が暮らす本住宅は、家族のつながりと一人ひとりの豊かな時間を両立させる住まいです。LDKと2階のロフトを一体化し、南庭に面した大開口や空を望む窓から光を導いて、開放感を生み出しています。玄関にはロードバイクのメンテナンススペースを設置。庭の桜とともに家が育ち、周辺の町並みに新たな風景を添えます。軒高を抑えた白い外観も、街との調和を静かに描いています。
古き物を活かしつつ緑を見てモダンに暮らす 建築設計工房BO5
昭和40年頃に建てられた主屋の台所と食堂部分を改修し、新たにリビングを増築することで、現代的なLDKへと再構成したプロジェクトです。増築部分は庭へと張り出すように計画し、室内からは常に緑を感じられる構成としました。既存建物の記憶を活かしながら、外部の自然と緩やかにつながることで、日常に豊かな広がりをもたらす住まいへと再生しています。
ねこと暮らす住まい 木村哲矢建築計画事務所
大阪近郊の住宅地に建つ、5人家族と2匹の猫のための住まいです。周囲を住宅に囲まれたコンパクトな敷地ながら、2階リビングと勾配天井によって伸びやかな空間を実現しました。高窓から光と風を取り込み、家族の気配を感じながら思い思いに過ごせる居場所を随所に配置。さらに梁上のキャットウォークや猫用くぐり戸、脱走防止扉など、猫たちの暮らしにも細やかに配慮しています。人と猫が心地よく共生する、温かな住まいです。
S邸 SUR都市建築事務所
居住スペースを主に2階に配し、1階に茶室と自転車のファクトリーなど趣味のスペースを設けた中庭型の2階リビング住宅です。建て込んだ南北に長い敷地のため中庭を挟んで2階にLDKと寝室を配置し、LDKは高い勾配天井で南からの日照を取り入れます。
紫波町の家 株式会社 SPAZIO建築設計事務所
岩手の旧街道沿いに建つ、二世帯のためのモダン和風住宅です。商店や住宅が並ぶ表通りと、田畑が広がる牧歌的な風景の双方に呼応するよう計画されました。建物は北西境界に沿って「くの字」に配置し、冬の厳しい風雪を防ぐ防風林「イグネ」のような役割を担わせています。一方で南東側には庭園と陽だまりの空間を確保し、四季の移ろいを身近に感じられる構成に。地域の風土や歴史を受け継ぎながら、現代の暮らしに寄り添う端正な住まいです。
狛江の家M邸 株式会社 中村高淑建築設計事務所
面積規模に制限のある長期優良住宅として、ほぼ最小限の規模で計画された住まいです。新旧の住宅が混在するやや密集した環境に対し、視界の抜けや木々の借景を取り込みました。1階には寝室と水回り、開放的な2階にはLDKと予備室を配置。家族の成長や人数に応じて間仕切りを変え、将来の暮らしにも柔軟に対応できます。
あきる野の家 望月建築アトリエ
敷地は郊外の市街地近くで、隣地に駐車場等がありプライバシーや騒音に配慮して設計しています。三角屋根をアクセントとする平屋の計画です。LDKは屋根なりに天井を高くした開放的な空間とし、リビングの一部に天井を低くした造付けソファのコーナーと出窓のベンチを設けています。ダイニングは広いデッキと庭へとつながり、オリジナルキッチンからパントリー、洗面室へと続く家事動線と、小さな和室と寝室が回遊する平面をしています。
四つの小屋と路地の家|四つ角の家 株式会社 山本嘉寛建築設計事務所
大阪府堺市の丘陵地に建つ住宅です。8.1m角の大きな家型の内部に、機能の異なる4つの小さな家を配置し、その間に路地のような歪みをもつ十字状の隙間空間を生み出しました。空間は開閉しながら連続し、暮らしに多様な関係性をもたらします。外部は具象的な焼杉のテクスチャを纏う抽象的な家型とし、内部は複雑なスキップフロアの構成を持ちながら単純なホワイトキューブとしています。
羽曳野の住宅 一級建築士事務所 Coo Planning
大阪府羽曳野市の角地に建つ木造平屋建ての住宅です。計画の見直しにより2階を省き、切妻屋根の勾配を活かした斜め天井で開放的な空間を実現しました。中庭を介してLDKをずらしながら連続させ、視線の広がりと多様な居場所を創出。個室を分散配置することで家族の適度な距離感を保ちます。黒を基調とした内装により、落ち着きあるホテルライクな住まいとしています。