通り土間のある家|設計事務所による注文住宅実例9選 著者:クラスキ編集部
通り土間のある家では、土間が単なる玄関スペースではなく、住まいの中を貫く重要な空間として計画されています。かつての日本の住まいにも見られた通り土間は、外と内をつなぎ、人や風、光が行き交う場所として使われてきました。現代の住宅では、その役割がさらに広がり、玄関から庭へと視線が抜ける空間や、家族の動線をつなぐ場として取り入れられることがあります。床材や天井の仕上げ、隣接する部屋との関係によって、土間は住まいの印象を大きく左右します。また、趣味の道具を置いたり、自転車を収納したりと、暮らしの個性が表れやすい場所でもあります。通り土間のある住まいには、内と外の境界をゆるやかに結びながら豊かな空間を生み出す工夫が見られます。その魅力が設計事務所による注文住宅でどのように表現されているのかを紹介します。
下鴨の家 越前良太デザイン研究所
京都・下鴨の歴史ある街並みに寄り添い、日本建築が持つ曖昧さや可変性を現代的に再解釈した住まいです。軒や通り土間、濡れ縁などを通して内と外を緩やかにつなぎ、光や風、季節の移ろいを暮らしへ取り込みました。用途を限定しない余白のある空間構成により、住まい手の成長や時間の変化に柔軟に応答。住宅を完成された器ではなく、人と環境、そして暮らしの関係性を育み続ける「場」として設計した住まいです。
smoke hut I 設計室
のどかな田園風景の中に建つ住まいです。南側に広がる田園と遠くの山並みを取り込むため、おおらかな屋根を架け、周囲の風景に穏やかに溶け込む佇まいとしました。小さなお店を営みたいという要望から、住まいの中に通り土間を設け、店舗と暮らしが自然につながる構成に。住まいでありながら店のようでもあり、店でありながら住まいのようでもある、落ち着きと柔らかさを備えた空間です。
聖蹟桜ヶ丘の家 株式会社 中村高淑建築設計事務所
多摩市・聖蹟桜ヶ丘の丘の上に建つ、眺望を楽しむ同居型二世帯のガレージハウスです。2階のリビングには中庭型のデッキを設け、目の前に立つ大きな桜を借景として取り込みながら、プライバシーと開放感を両立。家族共用の書庫に加え、夫婦それぞれの仕事場や趣味室を備え、出版関係の仕事にも配慮します。将来のホームエレベーター設置にも対応した、世代の異なる家族が心地よい距離感で暮らせる住まいです。
小浜の家 ARCHIXXX眞野サトル建築デザイン室
福井県小浜市、鉄工所を営む家族のための住まいです。隣接する工場との距離感を丁寧に読み取り、配置や素材を選定しました。内部は、鉄のフレームでつくられた手製の和室を中心に、家族が回遊できる動線を計画。随所に家人自らが手がけたスチール家具や階段を配し、鉄という素材の存在感と手仕事の温もりが響き合います。工場の営みを暮らしへと引き込み、家族らしさが随所に息づく、豊かな住まいです。
VIA 〜高台に建つ大きなウッドデッキのある家〜 YIA イシウエヨシヒロ建築設計事務所
公園の桜並木と松山の街並みを望む高台に建つ住まいです。眺望を最大限に活かすためLDKを2階に配置し、大きなバルコニーを介して風景と一体となる開放的な空間を実現しました。1階にはクラシックカーを収めるインナーガレージと、住まいの中心を貫く通り土間を計画。書庫や各居室を緩やかにつなぎ、愛車を眺めながら過ごせる豊かな日常を生み出しています。趣味や暮らしの多様なシーンを結び直し、住まい全体に心地よい連続性をもたらした住宅です。
光里の家-コンパクトにひろがる子育て世代の家- 乗松得博設計事務所
生後半年の男の子を迎えた家族のために計画された、成長とともに育つ住まいです。玄関と駐車スペースをつなぐ通り土間は、洗面や浴室、ランドリーへと連続し、日々の暮らしを快適に支えます。南庭と坪庭という趣の異なる二つの庭が、住まいに豊かな奥行きと変化をもたらし、光や風をやさしく取り込みます。コンパクトな構成の中に伸びやかな広がりを備え、自然を身近に感じながら暮らせる住まいです。
福岡 X 塔本研作建築設計事務所
福岡県小郡市の住宅地と田園風景の境界に建つ、4人家族のための住まいです。畑の広がる風景を背景に、彫刻のような存在感を放つ建築を目指しました。大きく張り出した庇や片流れ屋根が力強い佇まいを生み出し、訪れる人々を迎える和室や土間が地域とのつながりを育みます。吹抜けとトップライトに満たされたリビングは、日常と非日常が交差する象徴的な空間。静寂と開放感を宿した立体的な構成が、住まい全体に豊かな奥行きを与えています。
校舎裏の家 an Archi-Lab. 一級建築士事務所
母娘二人が暮らすための、長年住み続けた実家の建替え計画です。南側に小学校校舎が迫る19坪の狭小地という厳しい条件の中、敷地南側に小庭と濡れ縁を設け、光や風、奥行き感を住まいへ取り込みました。内部には、プライバシーや開放性に応じた複数の居場所を配置し、光が家全体を巡る構成を実現。周辺環境と丁寧に向き合いながら、限られた面積の中に豊かな居住性を育んだ住まいです。「早く帰りたい家」という言葉が、その心地よさを物語っています。
希望の家 多田建築設計事務所
築50年の住宅を改修し、一人の時間を豊かに過ごすためのプライベートハウスとして再生した住まいです。トップライトから降り注ぐ光を活かし、1階は土間を基調としたワンルーム空間に。居間やワークスペース、キッチン、バスルームが緩やかにつながり、奥行きのある開放的な構成となっています。2階にはダンススタジオのようなトレーニングスペースを設け、日常的に身体を動かせる工夫を随所に採用。自分らしい時間を楽しみながら、心身を整えるための静かな隠れ家です。